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2012年11月6日(火)

AVGにはもっとゲーム性を、メーカーにはもっとチャレンジをしてほしい――MAGES.に入社した高橋名人にインタビュー

文:電撃オンライン

 ファミコン名人として著名となって以降、ビデオゲーム業界を代表する1人として活躍を続ける高橋名人こと高橋利幸氏へのインタビューを掲載する。

高橋名人インタビュー

 2011年にハドソン退職後、メーカーの垣根を越え、ゲームプレゼンテーターとしてインターネット情報番組『ゲッチャ!』を中心にビデオゲームをPRをしてきた高橋氏。先日、MAGES.への入社が報道されたことでも話題の氏に、ゲーム業界の過去と現在、そして未来についてお話をうかがった。(※インタビュー中は敬称略)

■高橋名人、電撃20年祭で抱き枕の森に迷い込む

――今回はコンシューマゲーム黎明期より現在まで活躍されている高橋さんにゲーム業界の歴史や未来についてお聞きしたいと思います。

高橋名人インタビュー

高橋利幸(以下、高橋):よろしくお願いします。

――高橋さんは先日行われた“電撃20年祭”にいらっしゃったそうですが、あのイベントをご覧になられていかがでしたか?

高橋:会場をひと通り周ったのですが、昔のイベントに比べて女性の数が増えたと思います。1人でいらっしゃるというよりは、家族だったりカップルだったりするようでしたね。特に子ども連れはとても目立ちましたね。ただ、電撃20年祭は通常のゲームイベントとはまた違いますよね。アニメ系のイベントも多く、声優さんのイベントやグッズを目的とした人も多そうでした。自分は抱き枕が吊るされているスペースを見て驚きましたよ、「なるほどなぁ」と(笑)。

――す、すみません! ちなみに、この20年でゲームをプレイするユーザー層には変化があったと思いますか?

高橋:今から20年前というとスーパーファミコンの発売時期ですね。この時はまだ女の子向けのゲームが少なかったこともあり、イベントには9対1で男の子が来ていました。その流れの変化を感じたのはプレイステーションでリズム系のゲームが数多く発売されてからでした。

――確かに『パラッパラッパー』(※1)などは普段はゲームを遊ばない層の方々にも人気がありました。

高橋:はい。そこで一気に一般の方とゲーマーとの垣根がなくなったと思います。元々、ゲームの主流がACTやSTGなどの操作が難しいものだけではなく、RPGやAVGなどさまざまなジャンルのものに広がっていた時代だったというのも理由にありますが。

――最近はFTGでも簡単な操作を搭載したゲームが増えていますね。ゲームによっては大会に女性が参加されていることもありますし。

高橋:タレントさんや声優さんにもゲームが得意な女性は多いですからね。その影響もあると思います。そういえば、最近はリアルのサバイバルゲームに女性が参加してくることもあるんですよ。私が「装備は何を使うの?」と聞くと「○○○シリーズの○○○です」とかスラスラと答えて、それが本格的なライフルだったりしてビックリします。

――それはすごいですね。逆に昔のゲーマーは今もゲームをプレイしているのでしょうか? 例えば、高橋さんのもとに「昔からファンでした!」と訪れる大人はいたりしますか?

高橋:そういうことも多いです。ただ当時の世代の方は30代や40代になって家庭をお持ちになられた方が多いので、離れられた方も少なからずいらっしゃると思います。逆に家族全員で遊んでいるという方も増えていると考えていますがね。

――ゲームを極めるというよりはコミュニケーションの形として続けていると。

高橋:鈴木史朗さんや加山雄三さん(※2)のような若々しい方は、今でも現役でハイスコアを更新されていますけどね(笑)。やはりゲームに関しては親の世代の意識が変わってきたことも大きいと思います。

――今の親は子どものころからゲームに慣れしんでいる世代ですね。

高橋:ただ、昔も親のほうがゲームを遊んでいたりしていたんですよ。よく子どもから「うちの親は1時間以上ゲームを遊んでいるんですけど、これはいいんですか?」と相談を受けましたもん(笑)。

――(笑)。では次は業界視点のお話をお聞きしたいと思います。高橋さんはハドソン時代から広報として活動されていますが、最近のゲームメディアの有り方についてどうお考えですか?

高橋名人インタビュー

高橋:そうですね……。本来は秘密である情報が秘密でなくなりすぎているのが気になります。情報を求めているユーザーがいるのは確かですが、ゲームメーカーの宣伝マンとしてはもう少しワクワクする部分を残してもらっても……と思います。ゲームは自分で攻略法を探すことが楽しいんですよ。1から100まですべて説明する必要はないと思います。例えば、RPGの攻略だったら地図を載せるだけにして宝箱の場所は表示しないとか、もう少し隠しておいてもらいたいです。

――内容がすべてわかってしまうと攻略の道順が1つになってしまいますね。

高橋:攻略本を片手にゲームをプレイしてもいいのですが、例えるなら、推理小説を最後の部分から読んでしまうぐらいもったいないです。

――1度クリアした場所をもう1度やり直す時間がもったいないと思っているのでしょうね。確かに10時間ぐらいプレイしたあとに大事なアイテムを取り忘れていることに気付いてやり直す……というようなことになると、少なからずモチベーションが下がってしまいます。

高橋:いや、1度目のプレイはそんなことは気にしなくていいと思うんですよ。それこそ2周目に本を片手に完璧なクリアを目指せばいいんです。

――確かにゲームを買ったらそれぐらい遊び尽くさないと損かもしれません。

高橋:はい。ですので、マスコミの皆さんにはゲームをプレイする人の気持ちになって情報をお届けしていただければと思います。あともう1つ。自分はゲーマーの皆さんの攻略サイトも情報が載りすぎだと感じているんですよね。自分の知っている情報を共有しすぎと言いますか……。昔は裏ワザを知っている人間だけがヒーローになれたのに、皆さんそのチャンスをわざわざ逃してしまっているような気もします。

――なるほど。

高橋:あと、ゲームをプレイせずに批判したりする方もいるでしょう。実際に購入しているならまだいいのですが……。少しカッコ悪いですね。ゲームとは本来、楽しいものです。もしもつまらないと感じてしまうゲームがあったのなら、自分で遊び方を工夫してみたりするのはいかがでしょうか?

→MAGES.に入社した理由は……音楽CDを発売できそうだから?(2ページ目)

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