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2012年11月1日(木)

『マクロス』の河森正治監督が感じる『エクストルーパーズ』の魅力はバランスのとれた野蛮さ!? ここでしか読めないスペシャル対談の前半を掲載

文:電撃オンライン

■壁を打ち破るためにロボットをしゃべらせた

『エクストルーパーズ』

――小嶋さんにお聞きします。『エクストルーパーズ』の舞台が宇宙ということや青春的な雰囲気、ロボットが登場することなどから『マクロス』シリーズを連想しますが、作品を作るにあたって参考にしたところはありますか?

小嶋:そうですね、『マクロス』も参考作品の1つですね。元々、僕はロボットロマンが大好きなんです。メカの操縦がうまくなるに連れて主人公も成長していくとか、そういう成長の要素は本作に入れたいと思いました。スタッフに作品を紹介したり、「こういうテイストにできない?」とお願いしたり、1つのエッセンスとして題材にさせていただきました。

――河森監督の作品に対して、小嶋さんはどのような思い出がありますか?

小嶋:作品に育てられたので、色んな要素が自分には詰まってると思います。やっぱりメカデザインや特殊な設定だとか……たくさんありすぎて難しいですね(笑)。

『エクストルーパーズ』

安田:自分も小嶋さんと大きく年代は違わないので、『マクロス』が日曜の昼にやっていた世代です。そういった時間にロボットアニメを見ていたのは、今となっては不思議ですね。ロボットもいろいろな種類が出ていて、そこを体験できたのは、いい時代だったと思います。まあ、それを作った河森さんが横にいるのはもっと不思議な感覚ですが(笑)。

小嶋:何よりもカッコよかったですね。アニメの世界で飛行機が変形するのに、なぜかリアルでした。

佐藤:『マクロス』はとてもポップだったと思います!

河森:一応、30年経ってもまだなんとか続いているわけだからね!(笑)

佐藤:リアルロボット路線として『ザンボット』(無敵超人ザンボット3)から『ガンダム』(機動戦士ガンダム)へ移りつつあった後に、恋愛で世界を救うのがテーマだった『マクロス』は新しかったし、ポップでした。これは、僕のかかわる作品でつねに意識するくらい、血として体内に流れています。もちろん、河森さんと御一緒させていただいた『エウレカ』(交響詩篇エウレカセブン)もそうでした。

 あとは、『マクロス』はオタクが騒げるさまざまな要素が入っているのも印象的です。メカデザインをしている人が1人でなかったり、いろいろな漫画家さんがデザイナーとして参加されていたり。いわゆる“遊び”の感覚が受け手として楽しく感じていました……そういえば“ミスD.J.”という、『マクロス』内の架空のラジオ番組を収録したアナログ盤も出ていましたね!

(一同笑)

『エクストルーパーズ』

佐藤:それを聞きながら、「この世界に入りたい!」と感じていました。僕は殴られるのがダメなので、あの“白い木馬”に入隊するのはつらいと思っていたので。余計かもしれないですが。

河森:あれは、厳しい世界ですよね。

佐藤:でも『マクロス』は一般人もいて、アイドルオタクすら存在している世界設定でした。そこにすごく影響を受けました。ですから『マクロスプラス』や『マクロスF』で作詞とはいえシリーズに直でかかわらせていただけた時は、すごくうれしかったです。

河森:バージョンアップはあるけどロボットはAIもの以外基本的には成長しないので、キャラクターが成長する土台を作りやすかったというのはあるかと。キャラクターものだと、キャラがぶれているという風に見られがちだけど、我々の作品はそうではないというのが強みだったかもね。

安田:最近流行りの日常を描いたアニメでは、劇的な成長を描きにくいので、小さな成長や精神的なものになりがちですね。

『エクストルーパーズ』

河森:個人的には、『エクストルーパーズ』のような勢いのある作品だと血が騒ぎます(笑)。

佐藤:非日常な世界観で日常を、例えばヒカルとミンメイが、かぶと煮とかシャワーを浴びる日常感が素敵だなと。何もないところでいつもの日常をすごしていても、ただの日常ですから。

河森:日常の中で日常系のアニメを見ている子は、普段よほど非日常を生きているのかもしれないね。

佐藤:河森さんの描く世界観ギャップがいつも素敵だと思います。『マクロス』も戦場で本気のライブコンサートですから。

河森:でも調べると、実際にやっていることなんだよね。

佐藤:確かにそうですね。例えば実際の歴史でも、歌のプロパガンダはやっていましたね。スピーカーのウーファーシステムなどはもともと戦争に必要とされて広がったものですし。

河森:なのに、最初に『マクロス』を公開した時には「戦場で歌を歌うなんて不謹慎だ!」って言われました。いかに日本人が戦場感覚を忘れていて、アニメの中の戦争だけがリアルになっているかですね。

佐藤:おじいさんやおばあさんが語ってきたものが、止まってしまっている。実際には“東京ローズ”(太平洋戦争時に米軍が日本軍へプロバガンタ放送を行っていた日本人女性アナウンサー)なんて有名なDJもいたわけですから。

――ギャップという面で、小嶋さんはどのような仕掛けを用意しましたか?

『エクストルーパーズ』

小嶋:『エクストルーパーズ』のメカはリアル系なんですが、このギンギラだけはスーパーロボットです。

安田:しゃべるロボットというのは、僕ら世代にはグッときますね。

佐藤:デザインする際に、社内でどんな話になったんですか?

小嶋:本作はリアル設定の路線から、世界観でもはっちゃけたいという思いがありました。その壁を打ち破るためにしゃべらせようとしました。ブレンの相棒で、一緒に成長を見せられる存在にしたいと。

河森:自分もメカ好きだけど、メカ好きな人はリアルさやミリタリーっぽさだけを求めがち。でも、求めすぎるとすごく窮屈になっていくのを、わかってほしいですね。

佐藤:なるほど。

『エクストルーパーズ』

河森:自分も本当にメカが好き! 好きだけど、ミサイルと機関砲とレーザー砲だけだと、表現に限界があるのです。

(一同爆笑)

佐藤:河森さんがそれを言うと、重みがありますね。

河森:リアル系の限界に挑み続けていると、反動でにぎやかなことや、はじけたことをやりたくなる。『マクロス』と同じ世界観ではできなかったので、自分の場合は『アクエリオン』(創聖のアクエリオン)で無限パンチをやったし、『エウレカ』では「サーフィンしようか」って、ロボットをボードに乗っけた。

 何かに突破口がないと、限界を崩せない。そういう意味では、メカがしゃべるとかの変化は大事だと思いますね。文句を言う人もいるはずですが、別に僕らもリアルなものやミリタリーを嫌いなわけじゃないんだから「そんなに固いことを言わないで」と。

(一同笑)

佐藤:確かに物語にしてもデザインにしても突破口は大事ですね。『エウレカ』の時にボードの上にロボットが乗って空を飛ぶという突破口が見つからなかったら、あの世界観にはならなかったと思います。

 今回『エクストルーパーズ』のギンギラがしゃべるのも、1つの突破口だったのかもしれないです。まず今まで『ロスト プラネット』の世界でしゃべるロボは存在していないですし、これまでと違うところで個性を出すならしゃべってほしいと思いました。その後、ボイスが子安さん(声優の子安武人さん)に決まった時、『勇者』シリーズでのロボ声っていう思い入れもあったのでさらにブーストがかかりましたね!

河森:そういう時ってうまくハマるもんだよね。キャラが呼んでいたんだよ。

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