2012年11月6日(火)
どうも、ごえモンです。電撃オンラインでは、年末年始特別企画として“ゲームやろうぜ!キャンペーン”という読者参加企画を実施しています。
“ゲームやろうぜ!キャンペーン”とは一体なんなのか? というところは、11月1日に掲載した記事で確認いただくとして、ここでお届けするのは、電撃オンラインの編集者が選ぶ年末年始に遊びたいゲーム or プレイしてほしい個人的名作ゲームの紹介コラムです。先週は、ウチの洋ゲー担当・てけおんがPS3/Xbox 360用ソフト『ボーダーランズ2』を紹介しましたが、今週は僕が個人的にオススメしたい名作S・RPGをご紹介したいと思います。
その名作シミュレーションRPGとは、コレ! ナムコ(現バンダイナムコゲームス)が2003年に発売したPS2用ソフトを、2011年1月にPSPへと移植した『ヴィーナス&ブレイブス ~魔女と女神と滅びの予言~』です。すでにPSP版の発売から2年が経過しようとしていますが、今回の企画に発売日は関係なかったので、完全に趣味で選んでみました!
このゲームは、個人的にPS2のシミュレーションRPGの中では5本の指に入るレベルの作品だと思っています。しかし、そんな内容にもかかわらず認知度はそんなに高くありません。一部のユーザーからは名作として知られていますが、それでもやっぱり隠れていると思うんですね。そんなわけで、ここで少しでも本作について知ってもらうために、このゲームの魅力を簡単にご紹介したいと思います。
この物語の主人公は、とある理由で不老不死となってしまった男“ブラッド・ボアル”。ある日、そんな彼の前に女神が現れ、100年後に世界が終焉を迎えることを伝えます。そして、その100年の間に起こるさまざまな災厄を回避するため、世界中を旅し、強い仲間を集め、来たるべく終焉の日に備えて騎士団を作って100年間戦い続けなさい……と告げるのです。うーん、ものすごい無茶振り(笑)。
▲主人公のブラッド・ボアル。こう見えても345歳です。かつては“戦場の鬼神”、“神殺しのブラッド”、“惨劇のディアボロス”などと恐れられていましたが、今ではしがない山賊団のリーダー。 | ▲ブラッドに無茶振りした女神・アリア様。使命を優先させるあまり、「使えない仲間はさっさと切り捨てなさい」、なんてキツい催促をしてくるツンツンな女神様です。そんな彼女がやがて……。 |
もちろん、ブラッド以外は普通の人間です。100年間戦い続けられるわけがありません。ではどうなるか? ……年老いて死んでいきます。志半ばで散っていく仲間たち。不老不死だからこそ味わう孤独。そして普通の人間との隔絶……。これが、もう本っ当に! “せつない”んですよ!! ブラッドたちは行く先々で非常に大変な目にあいます。表面だけを見た場合、本作に対して“鬱ゲー”というイメージを持ってしまうかもしれません。
▲本作の中には、頻繁にウルっとさせるシーンや名言が登場します。クリアするまでに何度涙を流したことか……。 |
しかし『ヴィーナス&ブレイブス』で描かれるのは、そんな鬱屈とした部分だけではありません。根底にあるのは、師から弟子、または親から子へと受け継がれる意志、普遍の友情と愛、災厄に立ち向かう名もなき勇者たちの姿。つまりは人間賛歌が描かれているのです! 彼らの世界を巡る旅は、見ていて“せつなさ”がこみ上げてきますが、途中途中で描かれる温かさやブラッドの行き着く先に待っているものを知れば、間違いなく感情を揺り動かされることでしょう。
▲“せつなさ”と“温かさ”を同時に内包したような、絵本のようなグラフィックも『ヴィーナス&ブレイブス』の魅力の1つです。 |
この作品のゲームとしての魅力は、“不老不死の男が100年間戦い続ける”という設定をうまくゲームシステムに落とし込んでいる点です。キャラクターには年齢があり、イベントをクリアしたり、フィールドマップを移動したりすると、日数が経過していき年をとっていきます。
▲SRPGですが、フィールドマップが存在。歩くと恐ろしい勢いで日数が経過していきます。 |
さらに、キャラクターには“活動期間”と呼ばれるものが存在します。“25-31”などど表記されていて、これはキャラクターが活躍できる年齢を表しています。小さいほうの数字以前が“成長期”と呼ばれ、文字通りこの期間はパラメータがぐんぐん伸びていきます。小さい数字と大きい数字の間の期間は“全盛期”。成長度はゆるやかになりますが、もっとも活躍できる期間ですね。そして大きい数字以降は“衰退期”と呼ばれ、あとはパラメータが落ちていくのみになるのです。
▲新規団員を募集して、“衰退期”の人間ばかりがやってくることもしばしば。ちなみに、年齢によってキャラククターのグラフィックも変化します。 |
キャラクターが“衰退期”に入ってしばらく経つと、パラメータが下がるところまで下がって、HPが1とかになっちゃいます。つまり、どんなに活躍した歴戦の勇者でも、いずれは騎士団を引退しなければならない時が来るのです。……ここも非常に“せつない”ところ。特に初期の騎士団を支えたメンバーには思い入れが生まれ、例え“衰退期”に入っても、「こいつにはお世話になったから、もう少しだけ残しておこう」なんて考えてしまうのが人情というのも。
そんなことをやっていると、いずれは騎士団がどんどん弱くなっていき、そして敵に勝てなくなってしまうんです。なので、このゲームでは、どうしても世代交代が必要になっていきます。
▲どんなに強い団員も、死から逃れられない。引退させてからしばらくすると、ブラッドのもとに訃報が届く。このゲームでは、キャラを引退させたらそれで終わりではなく、ちゃんと“それぞれのその後”が感じられるようになっています。 |
しかし、本作は別れの“せつなさ”ばかりを味わうゲームではありません。別れとは出会いの始まり。キャラクターたちは騎士団内で恋愛をし、さらに関係が進むと結婚・出産をします。生まれた子どもは、15歳になると「僕は○○の息子です! これからよろしくお願いします!!」なんて言いながら騎士団に入団します。これが非常にアツい! 「そうか、お前はアクラル暦1020年ぐらいに大活躍したあいつらの息子か……」と、まるでブラッドになったかのような感慨深い気持ちでいっぱいになるんです。
『ヴィーナス&ブレイブス』は、このような世代交代を経て、いかに強い騎士団を作り100年間を戦い抜くか、という“騎士団マネジメントゲーム”とも言えますね。
▲団員たちに恋愛感情が芽生えるとイベントが発生! ゲーム的には、強いキャラ同士をムリヤリくっつけるようなマネジメントも必要になります。 |
RPGの戦闘として、“こんなにもシンプルで、こんなにも奥深いと思える”特徴的なバトルシステム“ローテーションバトル”も本作の魅力の1つ。元々は、PS2の最初期に発売されたRPG『7(セブン) ~モールモースの騎兵隊~』が初出のシステムですが、今作でもそれは健在です。
このゲームには、全部で17種の職業があります。それらの職業は、近距離攻撃が得意な職業、遠距離攻撃が得意な職業、回復が得意な職業、味方のサポートが得意な職業と、それぞれ固有の特性を持っています。その17種のキャラクターから、自由に7人を選んで、4×3のマス目に配置して戦うのが本作のバトルです。
▲騎士 | ▲戦士 | ▲冒険者 |
▲幻術師 | ▲アーチャー | ▲ヴァルキリー |
▲魔女 | ▲魔術師 | ▲僧侶 |
▲神官 | ▲剣闘士 | ▲サムライ |
▲ニンジャ | ▲祈祷師 | ▲巫女 |
▲聖騎士 | ▲魔騎士 |
それぞれのキャラクターは、配置したマス目によって役割が変化します。前列は攻撃と敵からの攻撃を受ける役割。中列は前列の味方をサポートする役割。後列は、後列のキャラクターを回復する役割、といった具合です。
このままだと役割が1つに固定されてしまうのですが、ターンの終わりに、クルっと任意に隊列をローテーションできるというシステムがそれを解決しています。そして、開戦前にキャラの配置を終えたプレイヤーは、戦闘では“ローテーションをさせるかさせないか”という2つの行動しかできなくなります。
プレイヤーは、ターン終了時に○か×ボタンを押すだけ……。非常にシンプルです! しかし、“開戦前に敵のパラメータ、行動パターン、思考パターンが開示されている”というシステム的ブレイクスルーが、このローテーションバトルに奥深さを生み出しています。
▲このシステムが生まれたのは、バレーボールのゲームを作ったことがきっかけだそうです。うーん、なるほど。 |
バトルを始める前から、“こいつは4ターン目に強力な攻撃を放つ”とか“レベルの低いキャラを優先して狙う”とか、“味方の戦士より行動順が遅い”などのことがすべてわかってしまうんです。これがミソ! つまり、“敵の行動に合わせて戦略を練り、配置を終えた時点でほとんど戦闘が終わっている”んです!! 戦略を練って練って、1ダメージも受けずに敵を完封できた時の爽快感。明らかな格上を相手に、ただ1つある勝利への道を見つけ出して打ち勝つカタルシス! これらの気持ちをぜひ体験してほしいですね。
▲勝つも負けるもプレイヤーの配置次第。ボタンをただ連打しているだけでは勝てない戦闘が魅力。やっぱりゲームはこうでないと! |
ちなみに、本作のルールについては渡空燕丸先生の解説コミックが非常に参考になります。ルールを知っているプレイヤーが読んでもおもしろいので、オススメですよ! 僕は最後のページ真ん中のブラッドの表情とセリフで、いつもウルウルしちゃいます(笑)。
本作の魅力はまだまだ語り足りないのですが、あまり詳しい話ばかりするのもアレなので、この辺りで筆を置きたいと思います。もっと詳しいことを知りたい人は、僕が担当したPSP版の特集ページでご確認ください。開発スタッフインタビューも載っていますよ! 体験版も配信されているので、そちらもぜひ!!
本作にはやり込み要素もあり、ブラッド同様“100年間戦えるゲーム”に仕上がっていると思います。まだプレイしたことがない人は、ぜひ年末年始の休日にじっくりプレイしてみてください! なお、プレイする場合はダウンロード版を強くオススメします!
最後に、本作の前身となる『7』のソーシャルゲーム『7 セブン サウザンドウォーズ』を、iOSでプレイすることができます。現在は“シーズン2”となり、寿命でキャラが死なないなど、システムが現代に最適化されてプレイしやすくなっています。ネットワーク上の他のプレイヤーと共闘することで、最大10人でローテーションバトルを行えるなど、別の楽しさも味わえるので、本編のプレイを終えたら、こちらもプレイしてみてはいかがでしょうか? 僕も“ごえモン騎兵隊”という名前でプレイしていますよ!(ごえモン)
▲iOS版“シーズン2”での最大の変更点は、バトルに10人が参加すること。寿命もないので、放置していてもどんどん年を取って死んでいったシーズン1よりも、気軽にまったりプレイできるようになりました。 |
●ごえモン プロフィール
ゲームやろうぜ!キャンペーンの企画者。PSP版『ヴィーナス&ブレイブス』の特集担当だった電撃オンラインの編集。『テイルズ オブ デスティニー2』ディスク2のPVで世界観やキャラクター、印象的なセリフ、音楽にやられて『ヴィーナス&ブレイブス』の虜に。もちろん、『7』もプレイ済み。アリアかヴィヴィのどちらが好きかと問われれば、「どっちも!」と答えてしまう優柔不断系男子。
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