2013年1月24日(木)
本日発売されたPS Vita初のダンジョンRPG『デモンゲイズ』。ダンジョンRPG作りに定評のあるエクスペリエンスが挑む新たなダンジョンRPGの形とは? プロデューサーの千頭元さんとディレクターの安宅元也さんにお話を伺った。
本インタビューは、本作の発売日当日ということもありゲームシステムや世界観についてというよりも、開発の裏話やゲーム内容まで少しだけ踏み込んだ内容となっている。エクスペリエンスのゲームに対する開発理念や今後の展開などにも注目してほしい。
――発売となった『デモンゲイズ』ですが、まずは発売をむかえての感想をお聞かせください。
▲本作でプロデューサーを務めるエクスペリエンス代表取締役社長の千頭元さん。 |
千頭元さん(以下、敬称略):開発期間が13~14カ月と弊社にしては長い作品でしたが、遊んでいておもしろい作品には仕上がったかなと思います。ただ、開発している最中にさらに上の目標が見えてしまったこともあり、もっとやりたいことができてしまいました。
安宅元也さん(以下、敬称略):最初に設定した目標に到達するだけでも、かなりいっぱいいっぱいではありましたからね。
千頭:というのも、開発期間が延びたこともあって、最初の段階から方向性を見直してみる機会が2回あったんですね。最初の目的は確実にクリアしたのですが、階段を1回登ると次の目標が見えてしまうんです。特にデモンの扱いなどはかなり当初とは変わった要素の1つですね。
ただ、これまでの弊社の作品というと、『円卓の生徒』など幅広いユーザーに向けたタイトルを作っても、やはりコアなユーザー向けのタイトルになってしまうことが多いんです。本作も内容的にはコアなんですが、今回は角川ゲームスさんとともに3DダンジョンRPGの裾野を広げるような作りを心がけました。
安宅:うちに今までいなかったユーザーさんが予約をしてくれたり、注目してくれたりしている印象はありますね。
千頭:昔から言っていることなんですが、3DダンジョンRPGはおもしろいので、弊社のタイトルに限らずもっともっと皆さんに遊んでもらいたいというのが、本作でも目標であり目的ですね。
安宅:従来のファンだけにしておくのはもったいないですからね。
千頭:そうそう、遊ぶ人が増えて市場が広がれば、さらに新しいダンジョンRPGも出てくると思います。『デモンゲイズ』も頑張りましたが、いろいろな切り口のダンジョンRPGが出てくれるとうれしいですね。
――今回、これまでとは違う方向性としてキャラクターデザインにクロサワテツさんと沖史慈 宴さん、デモンのキャラクターデザインにKyoさんを採用されていますが、そのいきさつを教えてください。
▲本作でディレクターを務める安宅元也さん。 |
千頭:本作のキャラクターデザインの方向性としては、ダンジョンRPGファンにちゃんと受け入れられつつ、新しいユーザーも獲得できるものという感じでした。ですので、萌えに振りすぎてもいけないと思いましたし、デザイナーとプランナーを全員集めて、皆で研究しました。まずは社内でいろいろなタッチの絵を作ってみて、それを元に他社さんの作品も含めて数値化していきました。
安宅:例えば『デモンゲイズ』だとキャラクターが5か6頭身で、他社さんの作品と比較するとどのあたりに属するか、とかですね。
千頭:そういったものを分析していって、戦って勝てるゾーンはどこかというのを見極めていきました。そのゾーンに沿った絵を描ける人がクロサワテツさんと沖史慈 宴さんだったというわけです。
また、ダンジョンRPGですので、ただかわいいだけじゃなくて、装備品もしっかりと描ける人でないといけません。社内で目標としていた『世界樹の迷宮』シリーズを見てみると、キャラクターがかわいいですし、そのキャラクターを見て職業がひと目でわかる。そういったところが重要であると思いました。
候補としていたイラストレーターさんの中には、ライトノベルの挿絵などを書かれている人もたくさんいました。ただ、デザインがゲーム性にかかわってくるため、ゲーム開発に詳しい方でないと、ゲーム上でおこした時に世界観が伝わりにくい絵になってしまわないかという懸念がありました。
▲『デモンゲイズ』メインイラスト |
安宅:絵の魅力に加えて、ゲーマーをうならせる説得力が欲しかったというところですね。
千頭:クロサワさんも沖史慈さんも、もともとゲームにかかわられていた方ですからね。とはいえ、この人選にたどり着くまではかなり時間がかかりました。
安宅:デモンのデザインをしたKyoさんについても同様です。
千頭:デモンについては、キャラクターデザインよりももっと高い敷居がありまして、キャラクターと機械、そしてモンスターも描ける人でないとダメだったんです。
安宅:デモン自体の仕様も二転三転しましたしね。当初、デモンは暴走すると完全にモンスターの姿になっていたんですよ。例えばマルスでしたら暴走すると機械竜の姿になるといった感じです。
▲デモンゲイザーとしてまず向かうことになる“赤の旧市街”に登場するデモン、マルス。左が通常時で、右が暴走時。 |
千頭:ですので、3つの要素に精通している人が理想でした。最初、Kyoさんではない別の方にお願いをしていたのですが、諸事情があって変更せざるを得ない状況になりまして……。仕様を一新した結果、新たなデモンのコンセプトにピッタリのKyoさんにお願いすることになりました。
安宅:このデモンのデザインと仕様が期間を一番必要としたところですね。
千頭:お話した通り、仕様も結構変わった要素でしたから、説明するための仕様作りも大変でしたね。Kyoさんは遠くに住まれている方なので、実はお話したことが一度もないんですよ。文面や資料で打ち合わせをしないといけないので、イメージのすり合わせなどは社内と違って難しいところがありました。
――少し前のお話に戻ってしまいますが、絵を分析して数値化するというのはどういった作業が行われていたのですか?
千頭:まず弊社ではさまざまな要因を元に、どういった目的を持ってタイトルを打ち出すかというのを決めるんですね。まず最初はビジネスとしてのプランを考えます。売れる本数が大事なのか、今開発している『剣の街の異邦人』(Xbox 360)のように、本数は気にしないで従来のダンジョンRPG向けに作るのか……。
安宅:本数を気にしないって(笑)。
千頭:まあ、おおよそのテーマを決めていく感じになります(笑)。次にここ数年売れているタイトルをダイヤグラムの中に埋めていって、スタッフみんなで「このタイトルについてどう思う?」という分析をかなり深く掘り下げます。
安宅:まずはここに時間を費やしますね。
――このタイトルだったら、だいたいこのあたりに位置するだろうといった感じの分析なのでしょうか?
千頭:そうですね。『剣の街の異邦人』でしたら、まずダンジョンRPGの中での印象を分けるんです。暗いとか明るいといったようなものから、クラシックなシステムなのか斬新なシステムなのかといったところですね。そうして、競合が今いないところはどこなのか、などを見ていきます。
安宅:競合がいないということは、もしかしたらそこは狙っちゃいけないところなんじゃないかという側面もありますけどね。とはいえ、まずは論理的にタイトルを分析していくというのが、うちのやり方ですね。
千頭:分析はできたけれども、その通りに開発できるかどうかはまた別の話ですから、なかなか難しいところではありますが。
――開発中に分析時との状況の変化もあると思いますしね。
千頭:だいたい変わりますね。『デモンゲイズ』ですと、絵柄についてはもう少し攻めた感じにしてもよかったかなとは思いますね。
安宅:あとたまにあるのは、うちがやろうとしていることと同じことを先にやられてしまった、というケースですね(笑)。
千頭:それはどこのメーカーさんでも一緒でしょう(笑)。個人的にはセガさんの『セブンスドラゴン2020』が出た時に、キャラクターデザインの基本コンセプトが似ていたので「うおっ」と思いました。あとはイメージエポックさんの『ソールトリガー』ですね。主人公のビジュアルイメージが似ていましたし……。日本ファルコムさんの『那由他の軌跡』なども歯車をイメージにしたタイトルだったりとか……。
安宅:他社さんでも分析はもちろんしていますので、そういったことはよくありますね。
難易度は『円卓の生徒』以上『迷宮クロスブラッド』未満→(2ページ目へ)
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