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2013年6月14日(金)

PS4、Wii U、Xbox Oneの3ハードが目指す方向性とは? ハードメーカー3社の戦略を考察【E3 2013】

文:イトヤン

■PS4は“ゲーマーのためのハード”というアピールに成功

 SCEのプレスカンファレンスは、PS3とPS Vitaに関する発表も行うことでPlayStationという1つのプラットフォームをアピールしていたが、やはり今回はPS4がメインとなっていた。PS4の発表ではまず、2月の発表会の段階では未公開だったPS4本体が初披露され、ソフトラインナップを紹介した後に、発売時期と欧米での価格を発表するという段取りになっていた。

 中でもインパクトがあったのは、やはり本体価格の発表だろう。MSのプレスカンファレンスで、Xbox Oneの北米での価格が499ドルと発表されたのに対して、PS4は399ドルと、日本円で約1万円もの差があったからだ。

【E3 2013】 【E3 2013】

 Xbox Oneには新型のKinectが標準で同梱される一方で、PS4では『PlayStation Camera』が59ドルで別売りされることを考えれば、実際にはそこまで大きな価格差とは言えないかもしれない。とはいえ、標準的な本体セットの価格にこれだけの開きがあることは、発売初日に購入を考えるようなコアゲーマーに対して与えたインパクトは大きいだろう。

 正直なことを言うとPS4とXbox Oneは、PS3とXbox 360のころに比べて、スペック上でのハード間の差異が少なくなっている。前述したように、サードパーティのソフトに関しては、その大半が両機種でリリースされる。SCEのカンファレンスでは、『ファイナルファンタジーXV』や『キングダム ハーツIII』、『The Elder Scrolls Online(ザ エルダースクロールズ オンライン)』のコンシューマ版、『MAD MAX(マッドマックス)』が初公開されたが、これらはいずれもXbox Oneでも発売されることが、SCEカンファレンスの後で発表された。また詳細は不明ながら、PS4のオンライン対戦は有料サービスのPlayStation Plus会員に限定されるとの話もあり、この点でもXbox Oneの形式に近づいている。

【E3 2013】 【E3 2013】

 だが、PS4とXbox Oneの間になおも存在している2つの違いを、SCEは今回のカンファレンスでしっかりとアピールしてきた。それは特に海外のコアゲーマーにとって重要な要素であり、会場の反応を見る限り、SCEはそのアピールに成功したと言えるだろう。

 まず1つ目は、ソフト認証に関する問題だ。Xbox Oneでは、ダウンロード版だけでなくパッケージ版ソフトを購入した場合も、24時間に1回のオンライン認証が必要となる。MSは中古ソフトの売買や友人への譲渡も可能だとしているが、まだ曖昧な部分が多い。これに対してSCEは、PS4ではオンライン認証が不要で、中古売買も友人への譲渡も自由にできる(つまり従来通り)とのアピールを大々的に行った。その結果、観客として詰めかけたゲーム関係者の反応は凄まじく、「SONY!」コールが巻き起こるほどの熱狂ぶりを見せた。

 ソフト認証や中古売買は、不正コピーの問題や小売店の存在意義といった複雑な事情が絡み合うため、簡単には結論を出すことのできない問題である。Xbox Oneで行われるオンライン認証にしても、いったん本体のHDDにインストールすれば、後はディスクレスで起動できるようになるというメリットもある。とはいえ、今回の会場の反応を見れば、海外のコアゲーマーがどういった施策を支持しているのか、はっきりと示された形になった。

 もう1つのPS4とXbox Oneとの違いは、このところ海外で急激にその勢力が拡大しつつある、インディーズゲームに対する姿勢だ。個人や小規模のデベロッパーによって、比較的自由な態勢で開発されたインディーズゲームは、PCのダウンロード配信を通じて人気が広がってきた。『Minecraft(マインクラフト)』の大ヒットなどをきっかけとして、その勢いが近年はコンシューマゲームの世界にまで影響を及ぼすようになってきている。

 実は、こうしたインディーズゲームのコンシューマへの発掘を積極的に行ってきたのが、Xbox 360のXbox LIVEアーケードだった。ところが近年、修正パッチの配信方法などを巡って、インディーズ系デベロッパーの間でMSに対する不満が高まってきた。同時期にSCEが熱心なアプローチを繰り広げたこともあり、2013年に入ってからは猛烈な勢いで、PS3やPS Vitaでのインディーズゲームのリリースが進んでいる。

 先に「PS4やXbox Oneの世代では、サードパーティの独占ソフトはほとんど存在しない」と説明したが、これはパッケージソフトを発売する大手パブリッシャーに関する話であって、ダウンロード配信が中心となるインディーズ系デベロッパーに目を向けると、状況は大きく異なる。今回のSCEのカンファレンスでは、なんと9本ものインディーズゲームが、コンシューマではPS4独占でリリースされると発表された。しかもそこには、『Bastion(バスティオン)』のSupergiant Games(スーパージャイアント・ゲームズ)、『Mark of the Ninja(マーク・オブ・ザ・ニンジャ)』のKlei Entertainment(クレイ・エンターテインメント)、『Skulls of the Shogun(スカルズ オブ ザ ショーグン)』の17-bitなど、かつてXbox LIVEアーケードで人気作をリリースしていたデベロッパーが、ズラリと顔をそろえたのである。

【E3 2013】
▲Supergiant GamesによるJRPG風のSFアクションRPG『Transistor(トランジスタ)』。映像のバックに流れる印象的な歌声は、同社の前作『Bastion』でも主題歌を歌った女性ボーカリストによるオリジナル曲だ。
【E3 2013】
▲『Mark of the Ninja』や『Shank(シャンク)』で美麗な2Dアニメーションを描き出したKlei Entertainmentだが、この『Don’t Starve(ドント・スターヴ)』は同じ2Dアニメでもタッチの異なる、野生サバイバルアクションとなっている。
【E3 2013】
▲Xbox 360とWindows 8のクロスプレイが可能なSLG『Skulls of the Shogun』を開発した17-bitの新作『Galak-Z』は、『宇宙戦士ガラク』という日本語のタイトル表記がクールな、全方向スクロールの探索型STGだ。
【E3 2013】
▲グニャグニャと奇妙な動きを見せるタコのお父さんを操作する、Young Horses(ヤングホース)開発のシュールな3Dアクション『Octodad: Dadliest Catch(オクトダッド:ダッドリースト・キャッチ)』。常識にとらわれないユニークなゲームこそ、インディーズゲームの真骨頂だ。

 もちろんMSも今回のカンファレンスで、「インディーズゲームは変わらず重視している」とアピールしている。だが、Xbox Oneで発表されたインディーズゲームは、『Minecraft(マインクラフト)』のXbox One版や『Below(ビロウ)』など、いずれもマイクロソフトスタジオが販売を手掛けることになっており、インディーズ系デベロッパーがなによりも重要視する傾向にある自由な態勢とは、やや異なる方向性が伺える。

 今後、ダウンロード配信によるゲームの流通がますます増加し、Android OSなどをベースにした新ゲームハードも登場してくる状況において、今回のカンファレンスでPS4とXbox Oneが見せたインディーズゲームに対するスタンスの違いは、現在受け止められている以上に大きな影響を与えることになるかもしれない。特に海外のコアゲーマーの中には、こうした自由な気質を持つインディーズゲームを熱狂的に支持する層が存在しているだけに、今後の動向をじっくりと見守りたいところだ。

 いずれにしても、2月の発表会の段階から“ゲーマーのためのハード”というスタンスを明確にしていたPS4は、今回のカンファレンスでもそのメッセージを色濃く打ち出すことに成功したと言える。今後は、今回のカンファレンスで獲得したコアゲーマーからの支持を、年末の発売に向けてどう拡大させていくかが重要になるだろう。

→最強の自社コンテンツを持つ任天堂の強さがWii Uでもカギとなる!?(3ページ目)

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