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2013年12月10日(火)

スクウェア・エニックス×日本ファルコム×スパイク・チュンソフト、クリエイター特別鼎談――日本のRPGの過去・現在・未来は?【後編】

文:まさん

 スクウェア・エニックスより、12月5日に発売された3DS用RPG『ブレイブリーデフォルト フォーザ・シークウェル』の特集企画。

 今回は、前編の記事に引き続き、本作のプロデューサー・浅野智也さんと、日本ファルコムの代表取締役社長であり『軌跡』シリーズのプロデューサーでもある近藤季洋さん、『コンセプション』シリーズを手掛けるスパイク・チュンソフトのプロデューサー・齊藤祐一郎さんによる特別鼎談をお届けします。(鼎談文中は敬称略)

クリエイター特別鼎談
▲写真左から近藤季洋さん、浅野智也さん、齊藤祐一郎さん。

 鼎談後編となる今回は、DLCについての話を皮切りに、これからのRPGの在り方や将来クリエイターを目指す人に向けてのアドバイスなどお話いただきました。前回以上に興味深い話が満載なので、ぜひ最後までご覧ください!

→“日本のRPGの過去・現在・未来”クリエイター特別鼎談・前編から読む

■追加課金はトッピングのおかわりである

浅野:お金を使うことって本来楽しいことだと思うんです。例えば、ショッピングに出かけるのは楽しいことですよね。

齊藤:確かに、お金を使って物を買うのは気持ちいいですね。

浅野:買い手が欲しいと思うものがあったとして、それを買えること。そして、そういった品揃えが用意されていること。それがサービスであると思っています。1つ、たとえ話をしましょう。立ち食いそばを食べに行って、きつねそばを頼んだとします。出てきたきつねそばには油揚げが1枚乗っているわけですが、そこでもう1枚油揚げが欲しいと思うことだってあるわけです。そういう時のために、提供する側としては追加の油揚げを好きなだけ買えるサービスを用意しておきたいということなんです。

近藤:油揚げが半分だとか、そばが少ないとか、きつねそばとしての要素を削って提供しているわけではない、ということですよね。

浅野:もちろん、追加の飲み物を売るためにつゆの味をわざと塩辛くしているわけでもありません。おいしく食べられるきつねそばをちゃんと出したうえで、油揚げをもっと食べたい人には、追加のトッピングとして提供することができるんです。この仕組みは、それほど嫌がるものではないと思います。

齊藤:確かに、そういう意図のものであれば納得はいきますね。

浅野:逆に、コンシューマのゲームは少しずつでもそういったサービスを生み出していくことで、ユーザーの皆さんにもっと満足してもらえる環境を作れるのではないかと思います。

齊藤:僕が考えるDLCというものは、機能ではなく体験を売るという意味合いが強いんです。『コンセプション』では一度倒したボスとの再戦や、コラボキャラクターのクマと戦えるというDLCを無料で提供していますが、これは戦略的な理由です。『コンセプション』が気になっていたけど発売日に買えず、時間が経って次のゲームに行こうと考えている人たちに対して、DLCで追加要素が配信されていますよと伝えることができれば、まだこのタイトルは終わっていないと思ってもらえますよね。

 また、先に買ってもらったユーザーさんたちに対しても、DLCで手強くなったボスやアイツともう一度戦える、というオマケは大きいと思います。『コンセプション』に関しては、強い子どもを産んで強いパーティを作ろうというところが根幹の部分にあります。だから、「ラスボスを倒した後も、育てたキャラクターの強さを存分に堪能してください」という場を設けたんです。それがコラボキャラクターで、さらにモノクマというキャッチーな要素があれば、少しでも興味を持ってもらえるかなと。僕らとしては、そうした部分をプロモーションとして考えているので無料で提供しています。

 逆に、有料で提供するDLCについては、浅野さんのトッピング理論と似ていますが、「気に入ったもののために、お金を出してもいいと思える方はDLCを買ってください」というスタンスですね。僕らは、こういった考えで有料と無料を区分しています。

 DLCって、本当にアコギにやろうと思えばやれてしまう手法ではあると思うんですよ。ですが、ちゃんと目的を考えたうえで、ユーザーさんが満足できる体験を提供できるのであれば、それ自体が決して悪い物だとは思いません。あくまで、その伝え方がユーザーさんにとって納得できて、内容が満足できるものであれば、もっと積極的にやってもいいと思うんですよ。そうして入ってきたお金で、新しい体験やおもしろいものを提供する。続編につなげていくためのきっかけとしてDLCを使うことに、僕自身ためらいはないですね。

近藤:齊藤さんがおっしゃったような、無料のDLCはプロモーションという考え方はファルコムも同じです。ただ、会社ごとに事情は異なると思いますが、RPGを作っていると開発期間が決まっていますよね。開発期間では入りきらなかった部分や、やりたかったけどできなかった部分。あとは、終わってから思いついたものなどをDLCとして配布し、なおかつお客様が納得できて喜んでもらえるものであればやっていこう、というのが『閃の軌跡』で配信しているDLCです。先ほど、浅野さんがお話されていたきつねそばのように、本編は本編で十分に最後まで遊べて、そこにプラスして楽しめるものを提供するスタンスですね。

 『閃の軌跡』では私服衣装を配信しているのですが、スタッフの間で「学校が休みの間は私服にしたいよね」という話が出たのは、マスターアップの期日までに実装がもう間に合わないタイミングでした。しかし、DLCであれば実現できるということで、これを+αの楽しみとして喜んでいただけるユーザーさんに向けて提供することにしました。

 齊藤さんや浅野さんもおっしゃっていましたが、DLCは長く楽しんでもらうための+αとして追加していけるのであれば、それが理想だと思います。またそれによって、次回作もぜひ遊びたいという気持ちを持ってもらえるとありがたいですね。ただ、有料にする以上は腹立たしいものであってはいけませんので、そこは『閃の軌跡』でDLCを始めたばかりのうちもまだまだ模索している段階ですね。

→日本のRPGにもまだまだ開拓の余地あり!(2ページ目)

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データ

▼『ブレイブリーセカンド』
■メーカー:スクウェア・エニックス
■対応機種:3DS
■ジャンル:RPG
■発売日:未定
■希望小売価格:未定
▼『ブレイブリーデフォルト フォーザ・シークウェル』前作所持者向け優待DL版
■メーカー:スクウェア・エニックス
■対応機種:3DS
■ジャンル:RPG
■配信日:2013年12月5日
■価格:2,900円(税込)

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