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2015年9月20日(日)

VRアプリの充実っぷりに製品化への胎動を感じた! Oculus VRブースレポート【TGS2015】

文:広田稔

 9月17日~20日に幕張メッセで開催されている“東京ゲームショウ2015”でゲームとはまた違った部分で注目されている分野が、バーチャルリアリティ向けヘッドマウントディスプレイ(VRHMD)だろう。

 今年はOculus VRがホール2、ソニー・コンピュータエンタテインメント(SCE)がホール6と、VR界の“二巨頭”がブースを構え、多くの人だかりを集めていた。

 ともに国産コンテンツの増加と、ゲーム以外の分野での利用というのが傾向として現れていた。まずはPC用の“Oculus Rift”とスマートフォンを使う“Gear VR”を出展していたOculus VRブースからまとめていこう。

“Oculus VR”
▲ホール2にあったOculus VRブース。TGSは2度目の出展で、昨年の大行列を反映してか整理券制になっていた。

 Oculus VRは、VRHMDの火付け役となった米国企業だ。2013年、Kickstarterで出資を募った初代開発キット(DK1)が出荷された後、“かぶると本当に別世界に入った体験ができる”という新しさを武器にして、デバイスに触ったゲーム開発者やガジェット好きを次々とトリコにしていった。

 2014年には、Facebookに20億ドルで買収されたことで知名度がアップ。第2世代の開発キット(DK2)を出荷したり、最新プロトタイプの“Crescent Bay”をお披露目したり、韓国のサムスン電子とのコラボでGalaxyシリーズ専用のVRHMD“Gear VR”をリリースしたりと、わずか1年でハードウェアをめまぐるしく進化させてきた。

 2015年には、6月に製品版の発売タイミングを“2016年第1四半期”と公表し、両手でVRの世界を操作できるモーションコントローラ“Oculus Touch”の開発を明らかにするなど、着々と製品化への道を歩んできている。ちなみに同社の共同設立者であるパルマー・ラッキー氏は、TGS会期中の9月19日に23歳の誕生日を迎えた。

“Oculus VR”
▲VRのものを両手で直感的に触れるようになる“Oculus Touch”。

“niconicoVR”やTHETA Sアプリなどに注目

 さて、話をOculus VRブースに戻すと、“国産コンテンツの増加とゲーム以外の分野での利用”という話ではGear VRでの傾向が顕著だった。

 体験できたデモのうち、ドワンゴのniconicoビューワー“niconicoVR”、リコーの360度写真プレイヤー“RICOH THETA S × Gear VR”、エジェのVRコンテンツナビ“VR Cruise”、Skonec Entertainmentのガンシューティング“Mortal Blitz VR”という、4本中3本が日本発の新作だ。

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▲Gear VR。Galaxy S6/S6 edgeをはめて使うVRHMDで、ケーブルレスかつ持ち運びやすいのが特長だ。

 niconicoVRは、動画のサムネイルがずらりと360度に並び、右脇のタッチパネルをスワイプして見たい動画を探して、動画を再生できるというアプリになる。動画自体は360度ではなく既存のものが表示されるが、例えばコメントが吹き出しとして浮き上がったりと独自の演出も入っている。また、定型コメントを選んで投稿することも可能だ。

 ポイントは、リラックスした姿勢で動画を見続けられるところ。例えばイスに座ってる場合、動画プレーヤーは正面にあるが、上を向いてしばらく待つと頂点側に移動してくる。ソファーに座って“だらーっ”とした姿勢で見るときには非常に役立つ機能になる。

“Oculus VR” “Oculus VR”
▲“niconicoVR”アプリ。

 他にも下を向き続けるとのぞき穴が空いて、Gear VRをつけながら目の前の様子が確認できる。Gear VRにはめられたGalaxy Sシリーズの背面カメラを活用したもので、例えば、動画を見ながらお菓子や飲み物をつまみたいときに役立つ。

 実はGear VR自体にも同様の“パススルーモード”があるが、手で右側面の“戻る”ボタンやタッチパネルを操作する必要がある。その手間すら面倒だと、首を動かすだけでリアル世界を見られるようにしたところが“わかっている”つくりなのだ。

 リリースは今秋予定とのこと。niconicoは、ゴロ寝しながら見ることも多そうで、今までのスマホでは手が疲れてしまっていたが、niconicoVRならハンズフリーなので、即戦力で役立ってくれるだろう。

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▲手元カメラ機能で目の前が見られる。

 THETA Sとのコラボも非常に面白い。THETA Sは動画/静止画に対応した360度カメラで、本体のボタンやスマホアプリからの遠隔操作でシャッターを切って、周囲の光景をまるごと残せるというユニークな使い方が可能だ。

 さらに展示していた“RICOH THETA S × Gear VR”アプリを使えば、THETA S本体のボタンでシャッターを切って数秒待つと、その360度写真がGear VR内に表示される。niconicoVRアプリののぞき穴は一部をリアルタイム動画だが、こちらのアプリは周囲すべてをほぼリアルタイム写真で見られるという違いだ。

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▲THETA Sは9月頭、ベルリンで開催した家電見本市“IFA 2015”で発表されたもので、国内の展示会では今回が初お披露目となる。10月下旬の発売日までほかの出展は予定してないとのことで、かなりレアだ。

 ただ、この“ほぼリアルタイム”はどちらかというと短時間でVRのおもしろさを伝えるデモ向きの機能で、本アプリはTHETAの360度プレイヤーとして有効だと感じた。

 今までTHETAで撮った360度写真は、スマホのタッチパネルを指で回したり、PCの画面上でマウスカーソルで動かしたりと、平面上で見ていたわけだ。せっかくの360度写真なのに、見るのは平面ディスプレイ……というのは、その面白さを十分に引き出せていない。その点、Gear VRなら自分が静止画の中心に入って、頭を動かして直感的に見られる。

 アプリのインターフェースもシンプルで、あらかじめ保存してある360度写真は目の前に球として並んでいる。見たい写真の球に目線を合わせて数秒待つと、360度のバックグラウンドがその画像に切り替わるので、次々と見続ていけるわけだ。もちろんGear VRにも360度写真プレイヤーは標準であるが、THETAの画像をケーブルレスで転送して見られる本アプリのほうが実用的だ。

製品化を意識した“もっと遊んでいたい”ゲームがずらり

 一方でOculus Riftのデモは、本筋のゲームを重視したラインアップだった。具体的には、コロプラのパズル“Fly to KUMA”、Insomniac Gamesのアドベンチャー“Edge of Nowhere”、Carbon GamesのRTS“AirMech VR”、Playfulのアクション“Lucky's Tale”など、バラエティーに富んだ7本だった。

 いずれも短い時間しか触れない展示会を意識したインパクト重視のものではなく、“もっと続きが遊びたい”と思わせる仕上がりだ。

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▲Oculus Riftは最新プロトタイプの“Crescent Bay”でデモしていた。

 以前にも書いた完全新作であるコロプラの“Fly to KUMA”は、スタート地点にいるクマたちをゴールに導くのが目的のパズルだ。ルートの途中には、ミサイルやレーザーといったワナが仕掛けられており、プレイヤーは青いブロックを操作して障害を除いて、クマたちを無事に通れるようにする必要がある。

 筆者的にはゲームももちろんおもしろいが、クマに近寄ってリアクションをみられたり、全方位が建物に囲まれていてクマたちと一緒にいる感じが強かったりするなど、VRならではのスパイスが加わっているところがグッときた。

 現状はゲームコントローラのアナログスティック2本とボタンで操作するが、両手で操作するモーションコントローラの“Oculus Touch”が製品版の発売以降に登場すれば、リアル世界でパズルを楽しむのと同じ感覚で、自分の手でブロックをつまんで、方向を変えて直感的に置いていけるという、新しい体験を実現してくれるだろう。

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▲Fly to KUMA。

 “Edge of Nowhere”も体験することができた。“ラチェット&クランク”シリーズを手がけるInsomniac GamesがE3で発表したタイトルで、行方不明の南極探検隊を捜索するアドベンチャーゲームとなっている。

 主人公を三人称視点で見下ろし、アナログスティックで行き先を指示してボタンでジャンプしながら雪山を突き進んでいくわけだが、例えば手すりのない不安定な橋を目の前にして、深い谷底を見たときの“えっ、マジでこれ渡るの!? 俺が?”的な気持ちが湧き上がってくるのがリアルだ。

 足を踏み外して落ちたときには、落ちてく主人公を見て“ごめん……”と反省しきりになる。トンネルに入るときの閉塞感、出たときの開放感も強く、南極に自分がいる気分を強く味わえるのがVRならではだろう。

“Oculus VR”
▲Edge of Nowhere。

 “AirMech VR”もぜひ体験してほしい1本だ。敵軍が侵入してくるので、自機の変形ロボットを操って反撃したり、味方の砲台を輸送して効率的に倒したりして、中央にある基地を守るという内容になっている。

 ちょこまかとメカたちが動いていて、弾やミサイルが飛び交っている様を“神の視点”から全方位見回せるのが単純におもしろい。ターン制ではなく、リアルタイムなのでユーザーの操作量がかなり多いが、トレーニングを突き詰めて敵軍の猛撃を跳ね返したときのカタルシスはかなり大きそうだ。

“Oculus VR”
▲AirMech VR。

 いずれも“VRってこのアイデアがおもしろいよね”という発見で終わるのではなく、“じゃあどう肉付けしていけばユーザーに長く遊んでもらえる?”や“アガる演出で、かつVR酔いさせないにはどうすれば?”を議論して、答えの一端を盛り込んできているのが伝わって来る。

 VRは今までハードが先行して話題になっていたが、ようやくソフトが追いついて“これを遊びたい!”と選べる段階になってきたのを実感した。

“Oculus VR”
▲ゲームの選択画面。すでにGear VRでは導入されていたが、Oculus Riftでも目線でボタンを選ぶなど、VRに適したインターフェースが整備されてきている。

 発売予定はGear VRが年内、Oculus Riftが2016年の第一四半期だ。各ダウンロードストアにどんなローンチタイトルが並ぶのか、今から楽しみだ。

■東京ゲームショウ2015 開催概要
【開催期間】
 ビジネスデイ……2015年9月17日~18日 各日10:00~17:00
 一般公開日……2015年9月19日~20日 各日10:00~17:00
【会場】幕張メッセ
【入場料】一般(中学生以上)1,200円(税込)/前売1,000円(税込)
※小学生以下は無料

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