News

2018年9月1日(土)

【おすすめDLゲーム】『Graveyard Keeper』で楽しむ墓守SLGのブラックユーモア。それ何の肉……?

文:キャナ☆メン

 ダウンロード用ゲームから佳作・良作を紹介する“おすすめDLゲーム”連載。今回は、PC向けに日本語版が配信されている『Graveyard Keeper』のプレイレポートをお届けします。

『Graveyard Keeper』

 本作は、中世風の異世界を舞台に、“墓守”として墓地や畑を管理するシミュレーションゲームです。普通に作物を育てて料理をしたり、自然の中から素材を集めてアイテムを作ったり、気ままにスローライフ的なプレイを楽しむ要素もありますが、特徴は墓守ゆえの死体を扱うブラックユーモアでしょう。

『Graveyard Keeper』 『Graveyard Keeper』
▲墓地や畑など、いろいろなものをコツコツと管理して、自分の箱庭を拡張していく楽しみがあります。

 死体を解剖して肉をハンバーガーにし、錬金術を用いて臓器から薬を作るなど、立場を利用して死体を冒とくすることが可能! 良心の呵責(かしゃく)を覚えながらインモラルな行為に手を染めていく、ゲームでしか体験できないおもしろさがあります。

 都市伝説的な噂でネコやミミズを使ったハンバーガーの話は聞きますけどね……まさか自分で人肉バーガーを作る日が来るとは!

『Graveyard Keeper』
▲屋台に食べ物を出してくれと頼まれ、人肉バーガーを出す主人公……! 頼んだ側は「いいぞ!」とご満悦(笑)。

墓守の初仕事は死体から肉を取り出すこと!?

 ストーリーは、現実世界で普通に暮らす主人公の男性が、交通事故に巻き込まれて異世界で目覚めるところから始まります。

『Graveyard Keeper』

 しゃれこうべのジェリーと出会い、もとの世界に帰れるかもしれないと知った主人公は、他に為す術もなく墓守としての一歩を踏み出すことに。ジェリーの言葉に流されるまま、死体を解剖して肉を取り出します。って、これが墓守の初仕事かい!(笑)

 人肉を売って儲けようぜぐへへへ……と近くの村へ肉を持って行くものの、王国の認可がない肉は販売禁止だと言われてしまう始末。この認可を得るまでの道のりは大変なので、肉は焼いてサンドイッチの具にしましたね。人肉でひと儲けする前に、その肉で腹を満たすことになるとは……世知辛い。

『Graveyard Keeper』
▲ジェリーの言葉通りに死体を解剖して肉を取り出すと、ハンバーガーのレシピが解放。のっけからツッコミ満載です(笑)。
『Graveyard Keeper』
▲取り出した肉はいくら放置しても腐りません。食べたり売ったりせず、保管しておくこともできます。

 他にも魔女狩りが行われていたり、墓地の地下で怪しげな召喚術を試みる人物がいたり、世界設定にダークなエッセンスがちらほら。ただ、全体的に雰囲気はゆるく、少し間の抜けた主人公やキャラクターたちの会話もあって、ダークさよりもシュールさを楽しめる物語と雰囲気になっています。

 というか主人公が天然ちゃんなんですよね……。地下に暗黒教会を築いてくれと頼まれたら「ハロウィンの飾り付けは得意だよ」と答えたり、悪人がくじけそうになった時に「君は危険で良心なんて知らない無法者じゃないか!」と励ましたり(笑)。

『Graveyard Keeper』

 なお、ストーリーについては、わかりやすく1本の道を追うのではなく、ある種のオムニバス的な作りになっています。複数のNPCからクエストを受注し、彼らのエピソードが時に絡み合い、時に主人公の“もとの世界に帰る”という目的に結びついて、1つの物語を成していきます。

 NPCと仲よくなってデートしたり結婚したりといった要素はありませんが、ストーリーを進めると、意外な人物同士が意外に関係にあることが判明するなど、箱庭世界に住む人々の小さな秘密が少しずつわかっていくおもしろさはあります。

『Graveyard Keeper』
▲魔女狩りをする審問官との会話では、手伝うか否かの選択肢が出ますが、あまり深く考えないほうがいい模様。仲よくしないと、墓地を広げられないので……。

ブラックユーモアが楽しい墓地管理SLG

 ゲームとしての1番のおもしろさは、やはり死体を扱うシュールでインモラルな遊びにあり、本作の大きな特徴になっています。

 死体の扱いの中でも、埋葬や火葬は墓守としての公式な仕事なので、それを行うと証明書をもらって収入に変えることができます。金を稼ぐのが大変な本作では、死体が銀貨に見えてくるので……そこに良心の呵責を覚えないでもないですが。

『Graveyard Keeper』
▲死体を埋葬するだけならまっとうな仕事なのですが……。

 とはいえ、死体が金に見えるのは序の口。この世界では、人体のパーツがさまざまな場面で代替品になります。いわゆる“もどき”扱い。

 例えば、素材としてさまざまな用途のある“種油”というアイテムは、種を搾って作ることもできますが、死体から取り出した“脂肪”を使って作ることも可能です。そして後者のほうがコストダウンにつながるという……!

『Graveyard Keeper』
▲ワインプレス機で脂肪を搾ると……あらふしぎ、種油に!
『Graveyard Keeper』
▲ちなみに瓶入りの種油は、村と灯台の間で大麻を栽培するおじいさんが売ってくれます。ロバがストライキを起こして困ったらこちらへ。

 死体からは臓器や血肉などさまざまな部位が採れ、火葬すれば灰と塩を採取できるので、ゲームが進むにつれて、素材の供給源として死体の重要さが増していきます。地下に錬金術の研究室を作れば、死体から得た素材でいろいろな薬を作れますし。

 もはや良心の呵責を超えて、ブラックユーモアの世界にどっぷり浸かってそれを楽しむ……他のゲームではなかなか味わえない体験です。

『Graveyard Keeper』
▲地下にある研究室で、人体を素材にして錬金術の薬を作るという……。何とも背徳感を刺激するシチュエーションです。

 もちろん、墓地がきちんと管理されることも重要なので、壊れた墓石の修復や墓石の作成なども大切な仕事になってきます。死体にかかわる遊びの中でも、何の背徳感もなくできる作業かもしれません(苦笑)。

『Graveyard Keeper』
▲最初は木製の墓しか作れませんが、ゲームを進めると石材や大理石を使った墓石を作れるようになります。
『Graveyard Keeper』
▲墓守として正式な地位を手に入れると、墓地にある教会の管理も任されます。週に1度、説教を行うと寄付をもらえて、これまた重要な収入源に。生臭さ坊主……?

 なお、墓守としての遊び以外にも、畑での野菜やブドウの栽培、収穫物を使った料理や酒造、養蜂や釣りにダンジョン探索など、多岐にわたる遊びを体験できます。

 逆に、やることが多くて忙しいくらいなので、畑の管理や素材集めなどは、自動化できる要素がほしいかもしれません。アップデートでゲーム内の1日は延びましたが、それでも首が回らない!

 ただ、いろいろできることがあって、次はあれを作ろうこれを作ろうと考えながら遊ぶのは楽しいですけどね(笑)。

『Graveyard Keeper』
▲ダンジョンでは意外と貴重な素材が入手できるので、墓地や畑を管理する合間に探索を進めたいところ。

オンリーワンの体験と日々よくなっていくゲーム

 他の作品で味わえないゲーム体験があるという点において、『Graveyard Keeper』は非常に楽しめる作品だと思います。人を選ぶ題材ではありますが、設定に興味を引かれるなら、本作のブラックユーモアやシュールな表現に、きっとおもしろさを感じるでしょう。

『Graveyard Keeper』
▲幽霊の愚痴を聞くのも……墓守の仕事のうち?

 一方で遊びやすさのほうには問題を残しており、一言にすれば面倒に感じる部分が多く、それが作業感や疲れのもとになっています。個人的には、ボックス内のアイテムを敷地全体で共有できずに歩き回るのが手間で、移動するにも柵や入り組んだ地形が邪魔をして遠回りを強いられる点に1番ストレスを感じました。

 ただ、本作はアップデートが日々積極的に実施され、さまざまなゲームプレイの改善が行われています。まだ不便なところが残っているにせよ、プレイする間にも、細かな部分で少しずつ遊びやすくなっていることを実感できました。このままアップデートが続けば、将来的には多くの不満が解消されることを期待できると思います。

 何より、自分の工夫次第で楽しめる部分があるゲームなので、コツコツと地道に積み上げて行くプレイが好きな人は、ハマれる作品だと思います。秋の夜長にのんびりとプレイしてみてはいかがでしょうか。

『Graveyard Keeper』
▲移動手段が徒歩しかない本作。アップデートで、特定地点にテレポートできるアイテムが追加されました。他にもいろいろな改善が日々行われています。
『Graveyard Keeper』
▲こちらはメインの作業場。いろいろ考えたり試したりしながら、地道に自分の空間を作り上げる遊びは楽しいです。

(C)2018 by tinyBuild and Lazy Bear Games

データ

▼『Graveyard Keeper』
■メーカー:tinyBuild
■対応機種:PC
■ジャンル:SLG
■配信日:2018年8月16日
■価格:1,999円(税込)
※開発:Lazy Bear Games

関連サイト