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2013年1月30日(水)

3Dの“ぱふぱふ”は必見!? 圧倒的に遊びやすくなった3DS版『ドラゴンクエストVII』の開発裏話インタビュー【ゲームやろうぜ!】

文:電撃オンライン

■バトル音楽は必聴! すぎやま先生の調整で、3DSに合ったオーケストラ音源が実現

――大きな変更として、音楽がオーケストラ仕様になりましたが、これは音楽を担当なさっているすぎやまこういち先生の提案なのでしょうか。

藤本:元々は、こちらからの提案です。最初は音楽をシンセサイザーで作っていたんですが、途中から“これをオーケストラの音でプレイできたら、とても臨場感のあるものになるだろうな”と思ったんです。そこで、すぎやま先生に「オーケストラでできませんか」とご相談したんですが、最初は断られました。むしろ、シンセサイザーのほうがいいと言われたんです。

――なんとなく、オーケストラのほうがリッチな音楽表現ができそうな気がしますが、違うのでしょうか?

藤本:シンセサイザーは楽器が横一列に並んで音を出すようなものなので、すべての楽器の音が聞こえて、安定感があるんです。

 その一方でオーケストラの場合、弦楽器が前で打楽器が後ろなど、音楽が立体的な聞こえ方になります。それはダイナミックに聞こえる反面、楽器ごとの音のメリハリがとても大きいんです。コンサートホールなどで生演奏として聞く場合は、そういった部分も含めて効果的な音楽になるわけですが、ゲーム機の場合はその表現が難しい部分があります。

 すぎやま先生は、そこを気にされていて、「ゲームにした時にオーケストラは不利になるだろう」という考えをお持ちだったのですが、「そこをどうにかできるのならやってみたい」とご相談して、オーケストラ音源での調整をお願いしました。

 具体的には、東京都交響楽団さんが演奏されたオーケストラ音源から、1つ1つの楽器の音を抽出して、3DSで聞いた時にきれいに聞こえる形で調整をお願いしたんです。その結果、すぎやま先生はギリギリまで3DSのスピーカーできちんと聞こえるように音を調整してくださって、今回のオーケストラ音源が実現したんです。

眞島:すぎやま先生は、「そのゲーム機から出せる音で、一番いいものにしなければ」というこだわりをお持ちの方なので、本当にギリギリまで調整されていましたね。

『ドラゴンクエストVII エデンの戦士たち』
▲オーケストラの音楽はどれもすごいが、特にバトル音楽はかっこよく仕上がっているとのこと。

藤本:でき上がったオーケストラ音源を、実際に3DSで聞いたらゾクゾクしましたね。特に印象に残っているのが、初バトルに入った時です。このシーンは、比較的静かな場面からバトルへと突入するんですけど、その切り替わりの部分が音楽的にもすごくインパクトがあって、素晴らしいんですよ。

 そもそも『ドラゴンクエストVII』のバトルの曲は、ユーザーの間でもすごく人気のある曲なので、僕と同じように強烈な印象を受けてくださるはずです。

――皆さん、それぞれにこだわって調整している部分があるんですね。逆に、もっとこうしたかった、というようなところはありますか?

杉村:正直、それはいつものことですね。もちろんスタッフ全員が、今、自分にできる最高のものを作ろうとしています。いつも気がつくと、「あれっ? もう終わらせないといけない時期?」という感じで(苦笑)。

 ただ、今回はこれまでのノウハウの蓄積があったので、思い切っていろいろとできたと思います。特にモンスターの3D表現は、以前の作品でのノウハウがあった分、本当に細かいやられアクションまで盛り込めました。

眞島:やっていると欲が出てくる部分もあるんですが、でもその欲って“やっていい欲”と“やっちゃいけない欲”があるんです。最初に堀井さんから言われた“全員がクリアできる”というところを目指す中で、トコトン何もかもを作り込んでいけばいいのかと言ったら、そうではないと思うんです。たとえば、グラフィックを作り込んでキレイに見せたいと思っても、逆に机の上に置いてある石版を見落とす可能性が高くなる危険性もあるわけですからね。

 物量をつぎこめばいいかと言えば、そうではなく、では逆にスカっとしていればいいのかと言えば、それはそれで生活感が感じられなくなってしまう。適度な部分を考えつつバランスを探っていくのは大変でしたが、心残りの部分はなく、やりきれたと思います。

――開発中に印象に残っている、苦労したエピソードなどはありますか?

藤本:このプロジェクトが決まった時に、堀井さんから「君たちならできるよ」というお言葉をいただいたことですね。それで膨大な仕様書に向き合う覚悟もできました(笑)。

 それと、“わかりやすく、迷わない『ドラゴンクエストVII』”というコンセプトを達成できたと、自分自身で確信した時です。一番最初のダンジョンをスムーズに遊べるプレイ感覚を実現できた時、「ああ、この調子で作れば大丈夫だ」、「これだったらプレイヤーの皆さんにエンディングまで遊んでもらえる」と手ごたえを感じましたね。

『ドラゴンクエストVII エデンの戦士たち』
▲今回の3DS版も、シリーズ屈指の大ボリューム! それだけに、開発やチェック作業は本当に大変だったようだ。

眞島:苦労したというか、それを象徴する出来事は、お正月に会社でお雑煮を食べたことです。ちょうど年末年始が開発の最後の佳境となる時期だったんですよ(苦笑)。

 マジメに答えますと、『ドラゴンクエストVII』は小さなエピソードが連続する構成になっているように見えて、その背景には本筋のストーリーが存在しています。だから、すべての要素をつなげないと全体的なチェックができませんし、全体を大きな目で見ないといけません。それでいて、エピソードそれぞれについては細かい部分もきちんと見ておく必要があるわけで……。その両方が一緒になっているので、通しのチェックが大変でしたね。

杉村:とにかくボリュームがあるゲームなので、何かアイデアを思いついてやろうとすると、その都度、物量が覆いかぶさってきたところが大変でした。

 「職業が変わった時に見た目も変わるとおもしろいよね」、「じゃあそうしようか」と勢いで決めて、あらためて職業の数を見てみたら「えっ、こんなにあったっけ……」と途方にくれたり(笑)。

 モンスターパークも、なつかせたモンスターで石版を探しにいく仕様を決めた後に、「えっ、モンスターって、こんなにいるの!?」と、遠い目になったりしました。

→お気に入りのキャラクターやストーリーの注目点も聞きました!(6ページ目へ)

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