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2013年4月15日(月)

『ドラッグ オン ドラグーン』シリーズ居酒屋座談会 with ヨコオタロウ on 仏滅。聖地・新宿で語られる『DOD』ぶっちゃけトーク

文:タダツグ

■カンペの中身は問題発言だらけ? 10年の時を超えて明かされる『DOD』開発秘話

 ここでみなさんにも、ヨコオ氏が持ち込んできたカンペの全文をできるだけ原文ママで公開しよう。文字が●●●といった形で消されているものがあったら、そこは大人の事情(ヨコオ氏がもっとも嫌うもの)でそうなっているものだと解釈してもらって差し支えない。

【『DOD』座談会 質問状とその返答】

Q:そもそも『DOD1』という作品はどのようにして生まれたのでしょうか? 開発秘話を教えてください。

A:キャビアのプロデューサー・岩崎さんと、スクエニ(編集部注:当時はエニックス)のプロデューサー・柴さんが、何かの飲み会で出会ったのが最初だと聞いています。キャビア内に『エースコンバット』を作った関係者がいたので、スクエニさんに「ドラゴンのフライト物どうですか?」と聞いたところ、やりましょう、となったとか。ヨコオが参加したのはこのあたりからです。でも、開発の途中で『真・三國無双』が流行したので「これを入れよう」と柴さんが主張し、フライトものと無双ゲーが混ざった形になりました。


Q:開発スタッフの合宿が行われたとのお話も聞きましたが?

A:合宿所に行く途中の下田にカニの美味しい店があってびっくりしました。


Q:『DOD』が、これだけファンを惹きつける要因はなんだとお考えですか?

A:知りません。


Q:名取さん(※)が担当されているシナリオや、あの愛すべき狂ったキャラ、世界観は、ヨコオさんの頭の中でどれくらい固まっていたものなのですか?

A:作りながら考えましたが、『DOD1』の時は“キャラ”、“設定”、“オチ”を考えたあと、ほとんど名取さんにお任せしました。とにかく暗く残酷なようにしてくれ、とお願いした記憶があります。名取さんはフェアリーのような汚いセリフを書くことについて「つらすぎる」みたいな感想をおっしゃっていました。

※名取さん:名取佐和子氏。ゲームシナリオライター・小説家。『DOD1』の他、『テイルズ オブ エターニア』や『ニーア』のメインシナリオも手掛けている。

『ドラッグ オン ドラグーン3』
▲“汚い”言葉のフェアリーさん。ちなみに、ボイスキャストは宮村優子さんである。たまらぬ。いろんな意味で。

Q:兄妹の禁じられた恋や、レオナールのペドフィリアなど、各所にインモラルな設定が盛り込まれている意味は?

A:中途半端に普通なモノを作っても、『FF』や『ドラゴンクエスト』に勝てるわけはありませんから。あらゆる点で暴投した結果が、ああいうことになっているんだと思います。当時、妹が12人とか出てくるアニメがあったので、パクッて妹がいっぱい出てくるエンディングを作ったりしました。でも、関係者がついてこれなくて、いくつかの要素はボツにさせられました。“マナが高速回転する”とか“ゲーム画面のポリゴンがぶっ壊れる”とか、浜●●●みが出てくるとか。

『ドラッグ オン ドラグーン3』
▲回転するマナのムービー。比較的低速。これが高速回転していたら……きっとうざかっただろう。プレイヤーもぶん殴りたくなるほど愛しさが増していたハズ。

Q:ヨコオさんの性癖や願望を反映したキャラは登場するのでしょうか?

A:僕はノーマルだと思います。自分で言うのもアレですが、僕のゲームは本当に暗いのではなくて、ファッション鬱なゲームだと思います。


Q:各キャラの名前の由来について教えてください。

A:『ドラゴン1』(編集部注:ヨコオ氏ら開発スタッフは『DOD』を『ドラゴン』の愛称で呼ぶ)の時は、「主人公側を悪魔の名前にしてやれヒッヒッヒ」くらいにしか考えていませんでした。ただイウヴァルトは“ジン”って名前だったんですが、岩崎さんだかが「もっとややこしい名前の方がいいね」って言って、そうなった記憶があります。


Q:数多くの武器を登場させた理由は? また、ウェポンストーリーが盛り込まれた経緯と、シナリオを執筆したスタッフについても教えてください。

A:あれは“RPG感”を出すための苦肉の増量で、適当にいろいろな人が書いています(たしか柴さんも書いていた)。僕も半分くらいは書いたと思いますが、どれを書いたのかはよく覚えていません。覚えているのは“草原の竜騎槍”くらいです。


Q:どんどんプレイヤーを絶望させていくという、かつてないコンセプトのマルチエンディングは、どのような経緯で生まれたものなのでしょうか?

A:特に何も考えていません。ちなみに、僕はすべてがバッドエンドだとも思っていません。ただ、最後の敵は「ゲームプレイヤーにとって最もつらい、想像を絶する状況とはなんだろう?」と考えて作りました。


Q:名曲『尽きる』はなぜファンに愛されているとお考えですか?

A:他の曲が聴くに堪えないからじゃないでしょうか。某誌さんのクロスレビューの初稿にもそう書いてありました。


Q:“新宿”での戦いを考えた経緯と、あの戦いの結末を開発スタッフに理解・納得してもらうためのプレゼン術についておうかがいしたいです。

A:最後のほうまで見せませんでした。見せた結果、柴さんはものすごく嫌がっていましたが、岩崎さんがゴネ押ししてくれました。たしか「『SILENT HILL(サイレントヒル)』でも、宇宙人的なオマケENDがあったけど、そのくらい軽いお遊びですよハハハ」みたいな感じでとおした、って言っていた気がします。


Q:ヨコオさんが印象に残っているシーンはどこですか?

A:最初のステージが、薄暗い黄色の曇り空なんですが、スクエニさんから「青空にしろ」って言われて。かたくなに拒否してたら「アイツ(ヨコオ)を外せ」と何度も言われました。これまた、岩崎さんがなんか大人の交渉をしてごまかしたらしいですが、あの時に辞めていたら、『ドラゴン』シリーズも違ったものになっていたのかもしれません。

『ドラッグ オン ドラグーン3』
▲どんよりと曇った空からゲームがスタート。言われてみれば、ゲーム開始時の演出としてはとてもめずらしいかもしれない。こういう細かい部分にこだわるのが“ヨコオイズム”なのだ……ろうか!?

Q:ピーター氏や唐沢寿明氏らをキャスティングした理由とは?

A:柴さんが有名人を使いたがった結果……な気がします。当時は「東スポに載りたい」って言っていました。

【後日、ことの真相を柴さんにうかがったところ……】

:その時は有名人を使うのが流行りみたいなものがあって、周りの宣伝マンに「有名人入れると売れるよ!!」って言われまして……。僕も駆け出しの新人プロデューサーだったので、真に受けてました。そこで舞台役者としても実績のあるピーターさん、声優の実績のある唐沢さんにお願いしました。ちなみにヨコオさんは最後まで反対してました。東スポの話はただ載りたいというわけではなく、ゲームを売るためです(笑)。


Q:『DOD』の開発スタッフってどんな人たちなんですか?

A:ディレクターが開発陣のことを語るのって胡散臭くないですか? 少なくとも僕はそうなんですけど。


Q:『DOD2』の物語を振り返ると、シリーズの正史は『DOD1』のAエンディングがベースになるのでしょうか? また、『ニーア』ではEエンディングが正史扱いと考えてよろしいですか?

A:『ドラゴン』の世界(『ニーア』の世界)は、分岐するパラレルエンディングです。なので、どれが正史というわけではありませんが、『ニーア』の世界は『ドラゴン1』のEエンドからの分岐になっています。こうした多世界に至る分岐については『ドラゴン3』で少し触れているのですが、なぜこういうパラレルワールド化したのかという根本原因については、あえて説明していません。振り返ってみると、岩崎さんに「『ドラゴン』は一作で終わる内容で考えて」と言われたので、続くことを一切考慮しなかった、その呪いみたいなものですね。それに、『ドラゴン』と『ニーア』は世界を救う大きな物語ではなく、小さな群像劇ですから、世界の謎そのものを解くことを物語の主眼にしていません。設定の説明不足が気になるんだとすれば、それはむしろキャラクターの魅力不足であることが反省すべき点だと考えています。


→俺の妹がこんなにかわいくないはずがない!?
男たちが語る理想の妹論(6ページ目へ)

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データ

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