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2013年7月22日(月)

『ルートダブル』PS3版で目指すのは“ユーザーの拡大”――移植経緯や拡張要素について中澤工監督にインタビュー

文:ごえモン

 イエティから、9月19日に発売されるPS3用ADV『ルートダブル -Before Crime * After Days- Xtend edition』。本作の原案・監督・プロデューサーを務める中澤工氏へのインタビューをお届けする。

『ルートダブル -Before Crime * After Days- Xtend edition』インタビュー

 本作は、2012年6月に発売されたXbox 360用ソフトにさまざまな新規要素を追加した“拡張版”。新規分岐&エンディングの追加、シナリオのテンポの見直し、ゲームシステムの改良などが“拡張要素”として発表されている。

 なぜ、Xbox 360版発売から1年という期間でPS3へ移植することとなったのか? 「完全版ではないか?」というユーザーからの声に対してどう考えているのか? そして、具体的にXbox 360版・PC版とどこまで違う作品になっているのか――開発を手掛けるレジスタの中澤氏にお話を伺った。

■Xbox 360版『ルートダブル』が1つの完全版であり完成形

『ルートダブル -Before Crime * After Days- Xtend edition』インタビュー
▲“infinity”シリーズや『I/O』などを手掛けたクリエイター・中澤工氏。本作では原案・監督・プロデューサーを務めている。

――本日はよろしくお願いいたします。まずは率直にお聞きします。今回のPS3版発売について、ユーザーからは「完全版」といった声が上がるかと思うのですが、それについてどのようにお考えですか。

 完全版だと言われてしまえば、返す言葉がありません。『Xtend edition』ではゲーム進行内容を見直していますし、少し追加の内容もありますので、Xbox 360版やPC版よりも進化しています。より洗練された内容という意味では、完全版といった受け取られ方をされても、やむを得ないかなと思います。

 だけど今回の、PS3版を発売する一番の意義は“ユーザーさんの拡大”なんです。そこも“EXTEND(拡張)”とかかわっていますが、僕らはおもしろいゲームができたと思っており、より多くの人に遊んでほしいと願っています。だからそのまま出すのではなく、新しいユーザーさんに向けてより洗練したものを出したかったのです。

 今回の改訂の目的は、新たな『ルートダブル』ファンを増やすことです。新たなユーザーさんに『ルートダブル』を知り、遊んでもらうために入口の拡張をしましたよ、少し異なる描き方や別の楽しみ方を用意しましたよというニュアンスなんです。

 ですので、皆さんがPS3移植版に関して思われておられる“まず不完全なものを作ってから、その後で完全なものを販売する”というような二重に商売をする意図はまったくありません。Xbox 360版の時に不完全なものを作った思いもないですし、その時はその時の全力を出し切って、完成した時“本当におもしろいものができた”と達成感いっぱいだったことを覚えています。

――当時の100%だったということですね。

 それは間違いありません。参加してくださったほとんどのスタッフがプライベートをすべて投げ打って、長い期間を費やし、表現方法や遊び方を細部に至るまで、考え抜いて考え抜いて生まれたものがXbox 360版です。あれがある意味1つの完全版……完成形であると、今でも思っています。

『ルートダブル -Before Crime * After Days- Xtend edition』インタビュー 『ルートダブル -Before Crime * After Days- Xtend edition』インタビュー

――Xbox 360版やPC版を購入された方々へ向けて、アペンドディスクの販売やパッチが配信されるのか、非常に気になります。

 現時点での予定はありません。このような回答しかできず、申し訳ありません。

――今回はPS3への移植となりましたが、PS Vitaという視野はなかったのでしょうか?

 ハードの選定は非常に難しい問題でした。やはり携帯機はADVとの親和性が高いので、携帯機で発売したい思いはあります。しかし、現時点ではPS Vitaの市場的に進出が難しかったのが正直なところです。可能性はすごくあるハードだと思うんです。ですが、率先して道を切り開くようなリスクをとるのは我々には困難だという判断が下されました。

 PSPなら、という考えもあるとは思いますが、『ルートダブル』の内容はPSPには容易に移植できない仕様になっていて、画質や音質の劣化、下手をしたら分割して複数枚組にしなければならないかもしれません。そうすると、ユーザーさんに劣化したものを出さなければいけないですし、プレイする際にもいろいろな負荷がかかる移植になってしまいます。何度か社内で検討したのですが、納得できない商品になってしまうということで、PSPも見送らざるを得ませんでした。

『ルートダブル -Before Crime * After Days- Xtend edition』インタビュー 『ルートダブル -Before Crime * After Days- Xtend edition』インタビュー

――そういえば、レジスタさんはPS3の開発環境があったんですね。

 『ルートダブル』のために急きょ環境を整えてもらいました。PS3の環境が事前にあって準備していたわけではなく、今まさにプログラマーに勉強してもらい、開発を進めているところです。初めてのハードですが、かといって、変なものは出せないというプライドが弊社スタッフみんなの中にありますので、ものすごく努力をしていますよ。もう現場はずっと修羅場です。

――ちなみに、CEROはどうなりそうでしょうか?

 まだ審査結果は出ていないので、なんとも言えませんが、追加部分に倫理的にグレーな表現はありませんので、おそらくXbox 360版と同じ“C(15歳以上対象)”になると思います。プラットフォームホルダーの企画承認も、一度コンシューマとして発売され、なんら問題が起きなかった実績もあったので、今回はすんなり通りました。

→追加ルートはキャラの内面が変わった結果生まれる新たな分岐(2ページ目)

(C)イエティ/Regista

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データ

▼ダウンロード版『ルートダブル -Before Crime * After Days- Xtend edition』
■メーカー:イエティ
■対応機種:PS3
■ジャンル:AVG
■発売日:2013年9月19日
■希望小売価格:未定
▼『ルートダブル』クロスポスター
■メーカー:アスキー・メディアワークス
■発売日:2012年7月14日
■希望小売価格:4,500円(税込)
 
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