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2009年9月1日(火)

【CEDEC 2009】『デモンズソウル』は“死”と“助け合い”がキーワードの作品

文:電撃オンライン

 9月1日~3日にパシフィコ横浜 会議センターで開催のゲーム技術者向けカンファレンス“CEDEC 2009(CESAデベロッパーズカンファレンス2009)”で、“デモンズソウルのゲームデザイン”と題されたセッションが本日行われた。

 このセッションには、今年2月に発売されて人気を博したPS3用ソフト『Demon’s Souls(デモンズソウル)』のプロデューサー・梶井健氏(SCE)と、ディレクター・宮崎英高氏(フロム・ソフトウェア)が登壇。梶井氏が『Demon’s Souls』制作の経緯を、宮崎氏が『Demon’s Souls』におけるネットワークを中心としたタイトルの独自性について語った。

■マーケティング主体ではなくゲーム主体の企画立案

『デモンズソウル』

 まず梶井氏は、技術の進歩とともに、CGによるリアルな表現、目を引く演出など、ユーザーにわかりやすくて高度な表現が可能となったことを説明。映像・音楽に加えて、ゲームの持つインタラクティブ性を含めると、現時点で「ゲームはエンターテイメント表現の最高レベルにある」と考えていることを話した。

 ただ、昔は1人のひらめきを少人数のスタッフでゲームにしていたが、現在は制作の規模も期間も拡大し、制作費が高騰。リスク軽減のために、「開発者が何が作りたいか」よりも「顧客が何を求めているか」を重視したマーケティング主体のゲーム制作を余儀なくされていることを語る。

 しかしその結果、万人が遊びやすく目を引く美麗な演出を施したゲームには、“売れたタイトルの続編”、“既に人気のある原作のゲーム化”、“人気のあるタイトルの模倣”が多くなっている、という考えを梶井氏は示す。その方向性は間違いではないと語るものの、梶井氏は「多くの新しいひらめきを埋没させているのではないか」という問題提起をする。ひらめきの埋没は、ゲームのマンネリ化へと繋がり、マンネリはユーザーの飽きを呼び、ひいてはユーザー離れとゲームそのものの衰退を引き起こすという危惧を、梶井氏の中に生んでいるようだ。

 その思いから梶井氏は、『Demon’s Souls』は“原点回帰”をベースコンセプトに「ゲームのおもしろさとは何だろう?」ということから考え、時流や売れそうということはひとまず横に置き、オリジナリティとおもしろいことを最優先させて企画をスタートさせたと語った。

■時代に逆行する恐怖の中でのチャレンジ

『デモンズソウル』

 PS3で開発した理由については、「PS3のタイトルが少ない」、「PS3でしか遊べない新しいものを作りたい」ということを挙げ、ハードの進化はグラフィックよりもプレイ(遊び)に生かすことを考えたと話す。他にも、プレイヤーの想像力をかきたてる設定や演出、制作スタッフが本当におもしろいと考える妥協のない作品の2点を意識したと語る梶井氏。だが、現在のゲームの流れの逆を行くゲーム作りに対して、周囲からも賛否両論で、作り手自身も怖さを感じて不安をぬぐえなかった事実も明かしていた。そしてそれは、現在のゲーム作りにおけるチャレンジになったことも話している。

 それでも「自由に作らせてもらえた」と梶井氏の語る『Demon’s Souls』は、今のような形となり、「現在の市場において数少ないオリジナリティあふれる作品になったと自負しています」と自信をうかがわせた。最後に「誤解を恐れずあえて言わせてもらうと」と前置いた梶井氏は、『Demon’s Souls』がマーケティング主体の作品作りに対し、ゲーム主体の創造性を追及するアンチテーゼに少しでもなってくれればと話し、「ゲームはいろいろあるから楽しい」という言葉で締めた。

→次のページではディレクター宮崎氏がゲームデザインを語る

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データ

▼『Demon’s Souls(デモンズソウル)』
■メーカー:SCE
■対応機種:PS3
■ジャンル:A・RPG
■発売日:2009年2月5日
■価格:6,980円(税込)
 
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