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2009年9月1日(火)

【CEDEC 2009】『デモンズソウル』は“死”と“助け合い”がキーワードの作品

文:電撃オンライン

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■“死”をベースにした原点回帰のおもしろさ

『デモンズソウル』

 次に登壇した宮崎氏は、「『Demon’s Souls』の原点回帰とは何か?」をゲームプレイの達成感に求めたことを話す。本作における達成感を得る手段としては、“強敵の撃破”、“レアアイテムの発見”、“ステージクリア”の3つを用意。成功による達成感の対極として失敗が欠かせないことも語り、もっともわかりやすい失敗として“死”を用意したのだと説明する。そして宮崎氏は、“死”を『Demon’s Souls』の重要な要素として位置づけている。

 “死”をベースにゲームを成立させる条件として宮崎氏が挙げていたのは、「死に納得感があること」、「死で心が折れず、また挑戦しようと思えること」、「死によってプレイヤーが成長すること」の3点。死への納得感は、理不尽ではなくプレイにミスがあったと思える死を演出すること、また「操作性が悪いせい」にならないようにすることを意識して作ったという。再挑戦へのモチベーションは、固有性の高いアイテムは死んでもそのままにし、ソウル(お金兼経験値)は失われても頑張れば取り戻せるようにすることで保った。最後の死ぬことよる成長は、敵や罠の配置をあえて固定することで、プレイヤーが死んだ時の経験を次に生かせるようにしたと話している。

■原点回帰だけでは足りないプレイヤーへの刺激

『デモンズソウル』

 しかし、単純な原点回帰では刺激が足りず、ユーザーが飽きてしまうとして、宮崎氏は原点回帰を支援する新鮮な刺激にネットワークを選んだ。『Demon’s Souls』におけるネットワークの解釈として宮崎氏が語るのは、「ネットワークは、マルチプレイのフィールドではなく、ゲームに刺激を与えるもの」ということ。ネットワークによる刺激は、その先に人間をイメージできるから、感情をともなった刺激になると宮崎氏は説明する。それゆえにネットワークのキーワードとして宮崎氏が挙げたのが、先に述べた“死”と対になる“助け合い”。「発想はシンプル。死ぬから助け合いはうれしい」と、“助け合い”をキーワードにした理由を語った。

 ネットワークをゲームに採り入れるにあたって、宮崎氏は、「『Demon’s Souls』でネットワークが支援するゲームプレイとは、シングルプレイであり、シングルプレイのよさは、自分のペースで気ままにできることです」と話す。それゆえ、通常のネットワークにともなう“コミュニケーションのわずらわしさ”はシングルプレイのよさを阻害するとして、それを徹底的に除外したことを説明した。

 結果、『Demon’s Souls』には、ボイスやキーボードを使ったチャットなど相互コミュニケーションは存在せず、徘徊幻影やメッセージ、血痕という一方通行のネットワーク要素のみが導入される。この効果として、「最初から計算していたわけではありませんが」としながらも、「不自由だからこそ通じ合えた時にうれしい」という距離感が演出できたことも宮崎氏は話していた。なお、『Demon’s Souls』のネットワーク要素は、MMORPGのような同期ネットワークではなく、ユーザーとユーザーがリアルタイムで同じものを体験するわけではない非同期ネットワークで成り立っている。上にも挙げた非同期ネットワークを使った要素は、企画段階ですでにほぼ固まっていて、後になっての足し引きは非常に少なかったそうだが、このアイデアがおもしろさを生むという確信は長いこと得られず不安にかられていたことも話していた。

『デモンズソウル』
▲なお、『Demon’s Souls』には非同期ネットワークではないネットワーク要素としてマルチプレイも搭載されているが、こちらはユーザー間を直接つなぐP2P方式だ。

 宮崎氏は、作りたいゲーム性と非同期ネットワークを使ったアイデアの相性が非常によかったことが幸運だったと話す。そしてその相性を決定的にしたのが“死”と“助け合い”だと語る。“死”と“助け合い”の2つをベースにしたことによって、「『Demon’s Souls』のゲームデザインが一本筋の通ったものになった」とまとめていた。

データ

▼『Demon’s Souls(デモンズソウル)』
■メーカー:SCE
■対応機種:PS3
■ジャンル:A・RPG
■発売日:2009年2月5日
■価格:6,980円(税込)
 
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