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2011年12月13日(火)

【地獄の軍団 集中連載 Vol.2】軍団ACTはこうして生まれた! 開発スタッフへのインタビュー記事をお届け!!

文:電撃オンライン

■開発スタッフインタビュー~『地獄の軍団』はこうして生まれた!

 今回はゲームデザインを担当した岡本さんを中心に、『地獄の軍団』の誕生秘話を伺ってきました。どうして“軍団”なのか? なぜ“地獄”なのか? 本作が今の形になるまでの変遷を含めて、さまざまなお話をお届けします!

◆『地獄の軍団』開発スタッフ

●柴 貴正●丹沢 悠一●岡本 基
▲本作のプロデューサー。代表作は『ドラッグオンドラグーン』『ロード オブ ヴァーミリオン』など。▲本作のディレクター。最終的なゲームバランスの調整やアドバイスなど、開発現場での調整作業を行った。ゲームデザインを担当した本作の生みの親。任天堂を退社後、エンタースフィアの代表取締役社長を務める。

◆ある意味で奇跡? プロジェクト名の『地獄の軍団』がそのままタイトルに!

――まずは本作を開発することになった経緯をお聞かせください。

 プロジェクトが始まったのは1年半から2年前くらいです。岡本さんが以前の会社を退社された時期で、最初は私の同僚が岡本さんに声をかけました。その後、私が引き継いで、本格的にプロジェクトが始動したという流れですね。

――本作はACTでありながら、多くの要素が詰まった不思議な作品になっていると思うのですが、ジャンルは最初からACTと決まっていたのでしょうか。

岡本 本当に最初の部分までさかのぼると、マルチプレイで遊べるものというか、たくさんのプレイヤーが一緒に遊べる作品を作りたいと思ったんです。大勢で遊ぶというテーマが、100人とか1,000人とかの規模の“軍団ゲーム”というアイデアにつながり、それをどう遊ぶのが楽しいのかと考えていった結果、ACTにまとめることにしました。

丹沢 最終的な遊ばせ方やまとめ方に苦労した部分はありますが、ACTというジャンルからはブレませんでしたね。

岡本 いろいろな要素が入っているので、開発の要所ではたくさんの決断をしたんですけど、思い返すとACT寄りの方向性にする決断が多かったです。これまでと違う方向性のゲームを作りたいとも思っていたんですけど、「あー。俺はACTがまだまだ大好きなんだな」と再認識する部分もありました(笑)。

▲“最大100匹ものゴブリンを率いて戦う軍団ACT”という部分はまったくブレなかったという。

――それが“軍団ACT”となったんですね。それでは、“軍団”とならぶ“地獄”というキーワードはどのようにして生まれたのでしょうか。

 1つのきっかけとなったのが、軍団ゲームならではのワラワラ感を生かそうと考えたことです。軍団=たくさんのキャラがワラワラと登場するわけですが、そのワラワラ感がうまく目立つのは、敵にやられた時なんですよね。

岡本 いわゆる、やられっぷりのよさが重要なわけです(笑)。でも、それをストレートに人間のキャラなどで表現するとまずいじゃないですか。と考えていった時に“地獄”という世界設定が浮かんだんです。

 そして地獄という世界観を表現する際に、イラストレーターの高村英彰さんにお願いしました。高村さんとは『ロード オブ ヴァーミリオン』でも一緒に仕事をしたことがあったので、きっとうまくいくというイメージはあったんですけど、実際には想像以上の大ハマリでした。

岡本 世界観については、とにかく高村さんにアイデアをいただきました。きちんとした設定画と一緒に、落書きめいたアイデアもたくさん書いていただいて、とても刺激になりました。

――魔王のデザインはスムーズに決まったのでしょうか?

岡本 何パターンかいただいきました。開発チームの中でもいろいろな意見が出ましたが、今の完成系のデザインの方向性からそんなにブレませんでしたね。そもそも『地獄の軍団』は海外での展開も視野に入れていたのですが、そういった部分もちゃんと表現されてましたし。個人的に魔王は、ゲーム中に自分自身が戦うわけではないひ弱な部分と、それでいて魔王と名乗るだけの悪い部分も兼ね備えているイメージを持っています。これは特に高村さんがデザインする際に意識されていたことなんですが、主人公自身が戦わないゲームなので、そこが納得できるデザインにしたいとのことでした。仮に魔王がマッチョなデザインだったら、なんでゴブリンを指揮して戦う必要があるのって思っちゃうじゃないですか。

丹沢 「自分で戦えよ」って思っちゃいますよね(笑)。

――設定的にも、魔王は錬金術の使い手となっていますしね。

岡本 戦士というよりも、魔法使いのイメージですね。こういう風にゲーム性というか、ゲームの機能的な部分からキャラクターや世界のデザインを考えていくというスタイルは、以前に任天堂でゲームを作っていた時に近い感覚だったので、すごく共感できました。

 こうして、プロジェクトの立ち上げ当初から“地獄の軍団(仮)”と呼んでいたんですが、最終的に商標をとってタイトルを決めようとしたら、そのまま商標がとれちゃいまして(笑)。

岡本 プロジェクト名がそのままタイトルになるという、まさかの展開に(笑)。

丹沢 スタッフ一同、「えー。これって商標取られてないんだー!」みたいな(笑)。それで、正式に『地獄の軍団』になりました。

――プロジェクト名がそのまま商品名になるのは、きっと珍しい例なんですよね。

丹沢 そうそうないですね。少なくとも、僕は初めてです。

 多くても1~2割くらいだと思いますね。

▲自分自身は攻撃せず、ゴブリンを指揮して戦う魔王様。ゲーム性の部分も加味して、デザインの方向性を考えていったとのこと。

◆軍団ACTという新ジャンルならではの苦労

――それでは次に、皆さんが具体的にどういった部分を担当されたのか教えてください。

 自分はプロデューサーとして、全体的な管理を行いました。『地獄の軍団』というゲームのコンセプトの部分やゲーム内容に関する全般ですね。特に重点的にかかわったのは、軍団ACTにしてマルチプレイも遊べるようにするという部分と、世界観の部分です。あとは、音楽ですね。「メタルでいきたい」と主張して、自分で担当しました。まあ、実際にはUNITEDの横山さんに選曲やアテンドのお手伝いをいただいていますが、横山さんと一緒に音楽面はほとんどを自分でやりましたね。

丹沢 僕はディレクターとして、最終的なまとめの部分を担当しました。『地獄の軍団』はゲーム的に新機軸の部分が多いので、開発途中ではあっちに転んだりこっちに転んだりと、いろいろと試行錯誤をしていた部分もあります。根本的なゲームデザインの部分は岡本さんが作り上げていくものなので、僕はそれを客観的に見てベクトルを合わせていくというか、最終的な調整を行った感じですね。

――最後に岡本さんが担当された部分ですが……。

 それ以外の全部を作ってます(笑)。

丹沢 ですね(笑)。

岡本 いやいや(笑)。まあ、たしかにゲームデザインとゲーム開発の全般を担当しました。先ほどお話したマルチプレイで遊べる軍団ゲームから軍団ACTとしてデザインしていく部分や、それを具体化して開発していく部分ですね。

――開発中に最も苦労した部分はどこですか?

岡本 細かい苦労はたくさんあったんですが、実は意外とスムーズに開発が進みました。初期の段階で決まった“地獄の軍団”という名前は揺らぎませんでしたし、高村さんのアートデザインもバシッと決まりましたし。実際にゲームの形にしていく際には迷うこともありましたが、主軸となる部分が揺らがなかったので、いざという時にはそこに戻ってこれるというのがすごく救いになりました。それから、ちょうど新しく開発会社(エンタースフィア)を立ち上げたばかりだったので、いろいろと忙しい部分はありましたね。

丹沢 僕は昔からACTを作ってきたので、そのノウハウを生かしつつ、PS Vitaならではの新しい操作感や、『地獄の軍団』ならではの遊ばせ方を考えるのが大変でした。あとは、ゴブリンがやられることが楽しいと感じられるように調整するのに力を入れましたね。先ほども話に出ましたけど、味方であるゴブリンのやられっぷりがいいとワラワラ感が出て楽しいんですよ。でも、ただやられるだけはゲームにならないので、そこをどういう風に楽しませていくかの調整が大変でした。最終的には、どんどんやられるけど比較的簡単に救助できるという形になっていますが、そのバランスが難しくって。救助しやすくすると簡単すぎるし、そこを難しくしてゴブリンがどんどん死んでしまうと、今度はストレスが強くなってしまいますしね。

岡本 ゲームデザインそのもので言いますと、ワラワラと動くものを遊ばせるっていうことは、ACTとして考えると難しい遊びになるんですよ。だいたいACTって、ちっちゃいものが素早く動くゲームか、大きいものがゆっくり動くゲームという分かれ方をします。ワラワラと動く集団は、部類としては大きいものを動かす形になり、大きいものをきちんと正確に動かそうとすると、どうしてもゲームのテンポが遅くなりがちになってしまうんです。だから本来、軍団みたいに大きなものを率いて戦う際には、激しく攻撃したりよけたりする動作を要求する設計は不向きなんですが、『地獄の軍団』ではあえてそこに踏み込んで作りました。

――確かにプレイヤーが操作するキャラが大きいと、細かい操作は難しく感じます。

岡本 だから、敵の攻撃を完全によけきるのではなく、ある程度はゴブリンが敵にやられることを前提とする形にしたんです。とはいえ、やられたら即死ではなく、気絶している間に救助すれば何度でも立ち上がるという形にすることで、ゲーム性を成立させていった感じですね。先ほど丹沢さんもおっしゃっていましたが、このバランス調整は本当に難しかったです。

 ゴブリンが気絶している時間は、何度も調整しましたよね。バージョンが変わるたびに、長くなったり短くなったり。

岡本 そうですね。普通のACTは“まったくやられないこと=ゲームが上手”という作り方なんです。『地獄の軍団』でもそういうことは不可能ではないんですけど、実はそれほど重視していません。ちょっと邪道かもしれませんが、“多少やられてもいいですよ”というスタンスなので、逆にやられることがストレスにならず、気持ちよさにつながるように遊んでもらいたいと思い、終盤での調整では気を使ったところでした。

▲敵にやられたゴブリンは、頭上にドクロマークが表示されて気絶する。放っておくと死んで消滅するが、気絶中なら魔王が近寄ることで救助できる。

――たしかに、ゴブリンがやられて吹っ飛ぶのも気持ちいいんですよね。救助するのが難しくないから、ストレスにならないというか、ちょっと不思議なゲームバランスだと思いました。このやられっぷりは、最初からゲームデザインに組み込まれていたんですか?

岡本 そういうルールにすることは早い段階で決まっていました。開発の後半は、派手なやられっぷりに見えるように調整しました。普通のやられ方よりも、派手にやられたほうがストレスが溜まらないという意見もありましたし。でも、普通は敵を倒す演出にパワーを注ぐものなので、やられっぷりにパワーを注ぐというのはあんまりないですよね(笑)。テストプレイの際にいただいた意見も参考にしながら、いろいろと調整しました。

 テストプレイは社内外のたくさんの人に参加してもらいましたが、やっぱりACTって、遊んでいるうちにみんなうまくなっちゃうんですよね。だから気をつけないと、いつの間にか難易度がどんどん上がっていったりしましたね。

丹沢 それもあってか、東京ゲームショウで一般の方に遊んでいただいた時には「難しい」という反応が多くって。

 一時期は難易度が激しく上がりすぎていて、ビックリしました。ちょっと画面を見ただけで、「もう無理無理無理!」みたいな。

丹沢 ACTというジャンルは、遊ぶ人によってかかわり方のレベルに違いがあると思うんですよ。すごくACTが好きで、“とにかくしゃぶりつくすぜ”っていう人もいれば、“とりあえず区切りのいいところまでちゃんと遊びたい”という人もいます。今回、我々が考えるゲームをすべてエンディングまでのステージに詰め込もうとすると、本当にコアでゲームがすごく上手な人しかクリアできない難易度になってしまいそうでした。それもあって、本編クリア後に“冥界”という高難易度のステージを入れることで、バランスを調整しています。

岡本 あっさりクリアできるわけではありませんが、頑張ればエンディングは見られると思います。その後の冥界はとにかく“どギツい難易度”で、さらにやり込みたい人に向けたものです。いろいろなユーザーさんに対応するためには、こういう構成が一番いいのかなと。

 ある意味、流行りの構成ですよね。

岡本 本当の地獄を味わいたい人は、最後までおつき合いください。

▲本編クリア後に挑める冥界は、かなりのボリュームがあるとのこと。また、変異種と呼ばれる非常に強力な魔神も登場!

→インタビューはまだまだ続く!
いよいよ軍団ACTの秘密が明らかに!!(3ページ目へ)

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データ

▼『地獄の軍団』ダウンロード版
■メーカー:スクウェア・エニックス
■対応機種:PS Vita
■ジャンル:ACT
■発売日:2011年12月17日
■価格:3,990円(税込)

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