2011年12月16日(金)
今回は音楽を担当した横山さんを中心に、『地獄の軍団』の音楽に関する話を伺ってきました。30年にわたって活躍を続ける伝説のメタルバンドUNITEDのメンバーでもある横山さんからお聞きした、ロックでメタルな熱いお話をお届けします!
●柴 貴正 | ●丹沢 悠一 | ●横山 明裕 | ||
▲本作のプロデューサーを務めたクリエイター。メタル音楽を愛し、本作におけるメタル音楽の採用を決めたキーマン。 | ▲本作のディレクター。主に開発現場での調整作業を担当して、ゲームバランスの調整やアドバイスなどを行った。 | ▲メタルバンドUNITEDのベースを務めるミュージシャン。本作への楽曲提供のほか、選曲やバンドへのアテンドなどを担当した。 |
――本日は『地獄の軍団』の音楽面に携わったUNITEDの横山さんをお呼びしてお話を伺います。
柴 横山さん、お久しぶりです。直接お会いするのは久々になりますね。
丹沢 もしタバコを吸われるなら、灰皿をお出ししますよ。
横山 いえ、僕はタバコ吸いませんので。吸うのは女性の××××××。
柴 いきなり危険球は止めてください!!
横山 あ、今のところはコレ(手でハサミを作ってカットするポーズ)で(笑)。
柴 録音されているのに、なんてことを言い出すのやら(苦笑)。焦りましたよ。
▲優しそうな笑顔で、いきなり発禁表現の先制パンチを繰り出す横山氏。おそるべし!? |
――こちらもビックリしました(笑)。気を取り直してインタビューを始めさせていただきます。『地獄の軍団』の音楽はボーカル付きのメタルな楽曲で統一されていますが、どのような経緯で決まったのでしょうか。
柴 タイトルにもある“地獄”のイメージを出すには、グラフィックはもちろん、音楽も非常に重要だと思ったんです。また、これまでのゲームにはないジャンルで、BGMを作ってみたいとも思っていました。そこでいろいろなジャンルを考えてみたのですが、やっぱり「地獄といえばメタルでしょ!!」という結論に行き着いたんですよ。試しにいろいろなジャンルの曲でBGMを作ってみたんですけど、思ったとおりヘヴィメタルが最もこのゲームの雰囲気に合っていました。
――今回、非常に多くのメタルバンドから楽曲提供を受けていますが、その中で伝説のメタルバンドとも呼ばれるUNITEDを選んだ決め手はなんだったのでしょうか。
柴 楽曲提供のオファーを出すのは日本のヘヴィメタルバンドにしたいと決めていたことや、個人的にファンという部分などもありましたが、ちょうど開発スタッフがUNITEDの横山さんと親交がありまして。ダメモトでオファーを出させていただいたところ、横山さんに快諾していただけたんです。
横山 そのスタッフの方とは、以前にDJイベントで知り合っていたんです。その時は彼も僕もDJとして呼ばれていたんですが、かける曲が被りまくっていたのが印象的でした(笑)。
――横山さんは、これまでゲームに音楽を提供されたことはあったのでしょうか。
横山 いえ、本作が初めての提供になります。実はオファーをいただいた時に、新たに11曲を作ってほしいという話をされたんです。でもボーカルが入ると歌詞も書かないといけませんし、作業量が膨大になってしまいます。ですが、ちょうどUNITEDがアルバムを出すタイミングでしたし、新しいことに興味があったのでお引き受けしました。作曲も少し行いましたが、基本的にはゲームに収録する楽曲の選曲や、その楽曲を提供してもらうためにいろいろなバンドへ声をかけてアテンドをした形ですね。
――ちなみに、横山さんと柴さんが初めてお会いした際の第一印象はどのようなものでしたか。
横山 申し訳ないんですが、最初は柴さんをなめてかかっていたところがありました。メタルのこととか何も知らずに、単なる仕事として話に来ただけなんじゃないの? みたいな感じで。でも、とてもヘヴィメタルに詳しいとわかってビックリしました。それからは、いい関係で仕事をさせてもらいました。
柴 僕は中高生時代からヘヴィメタルが好きで、実際に楽器で演奏もしていたんです。それで横山さんに初めてお会いした時の印象ですけど……なんだか不思議なオーラが出ている感じで、ヘヴィメタルかハードロックを演奏している人以外はありえないという雰囲気でしたね。それ以外であえて挙げると、ヘヴィメタルかハードロックの曲が流れている飲み屋のマスターか、楽器屋でものすごいチューニングをしている店員、というところでしょうか(笑)。
横山 ものすごく職業が限定されますね(笑)。
柴 でも、音楽を生業としている方というのは間違いないという印象でした。もう1つ印象に残っているのが、すごく心が優しい方だということですね。一般の方には、ヘヴィメタルやハードロックを演奏している方は怖そうなイメージがあると思うんですが、横山さんはそのような雰囲気がなく、話し方も柔らかくて心が優しい方だと思いました。
横山 そのつもりで演奏しています(笑)。
――ボーカル入りのヘヴィメタルをBGMとすることについて、開発スタッフ内での評判はいかがでしたか。
柴 ええと、今だからこそ横山さんにもお伝えしますけど、当初は開発スタッフのほとんどが反対していたんです。
横山 あー、だからか。開発しているところに顔を出した時、なんだか微妙な反応だと思ったんですよねえ(笑)。
柴 いや、それは横山さんの雰囲気がメタルバンドらしくてちょっとビックリしてただけだと思います(笑)。そんなわけで、あまり前例がないことでもありますし、反対意見は多かったんですけど、僕が強引に推し進めていったんです。そしてBGMとゲーム画面を合わせているうちに納得してくれて、最終的にはみんな賛成してくれました。ユーザーも「これしかない!」と感じてくれるはずです。
丹沢 ゲーム中に使用する楽曲やバンドを公式サイトで少しずつ公開しているんですけど、そのたびにユーザーから熱い反応が返ってきますね。こんなことは、これまであまりなかったことです。
柴 あまりゲームを遊ばない、社外のメタル好きな友人から『地獄の軍団』の問い合わせがあって驚いたりしました。お気に入りのバンドが楽曲を提供しているから気になって連絡してきてくれたんですけど。
丹沢 今回はとにかくBGMがかっこよくって、デバッグやテストプレイの際にみんなヘッドホンをつけてプレイしているのが印象的でした。作品によってはBGMを聞かずに黙々とプレイすることもあるんですけど、『地獄の軍団』についてはBGMがすごく重要なポジションにある感じで、BGMを聞きながらプレイすると疾走感や爽快感がものすごく変わってくるんですよ。ユーザーの皆さんも、ぜひ音量を上げてBGMにノリながらゲームをプレイしてください。
▲とにかく疾走感があるメタルな楽曲のオンパレード! 全編クライマックスという感じで、『地獄の軍団』と非常にマッチしている。 |
――楽曲を提供しているバンドはいくつなのでしょうか。
丹沢 14バンドです。こんなに多くのバンドが参加しているゲームは、聞いたことがないですね(笑)。
横山 最初は、そこまで多くのバンドを集めるつもりはありませんでした。ですが、開発スタッフの方々のイメージが広がったようで、参加数がどんどん増えていったんです。僕としても、たくさん参加してもらったほうが、それぞれのバンドに喜んでもらえると思い、声をかけていきました。結果的に、BGMには各バンドのさまざまな持ち味を出すことができましたね。
柴 各バンドに声を掛けてまとめなければならない横山さんには、大変な苦労をかけてしまうだろうと思っていました。でも、いい音楽はユーザーも満足するはずなので、そのためにも多くのバンドを集めていただきたいと伝えました。
丹沢 それぞれのバンドも、横山さんからのオファーだからこそすぐに快諾していただいたわけで、我々から直接オファーしてもうまくいかなかったと思います。
横山 インディーズの中にも、ヨーロッパツアーを行うほど実力があるバンドはたくさん存在するんですよ。でも日本の一般の人にはなかなか目を向けてもらえないんです。そこでメジャーやインディーを含めて、そのような、頑張っているバンドの曲を聞いてもらえる機会を与えようと思いました。これにより、メタルというジャンルが発展していけばいいですね。
柴 本作に関しては、演奏バンドをセレクトする基準はネームバリューの大きさではないと思っています。単純に、みんなで聞いて「いい!」と思った曲を演奏するバンドになりますね。我々はいい曲を提供していただいて、バンドはユーザーに聞いてもらえるという、Win-Winの関係で仕事ができたのは、非常によかったと思います。
――選曲を終えた後は、スムーズに作業が進んだのでしょうか。
横山 実は一部の曲の歌詞で問題がありまして。海外で言ってはいけない言葉が歌詞の中に入っていたんです(笑)。まあ、メタルの歌詞は内容が反抗的な感じになりがちですから、よくあることなんですけどね。
丹沢 最初は、その言葉を削除してアレンジしてもらおうと思っていました。でもピー音や爆音を被せる形にするとおもしろいのではないかと考え、横山さんに加工していただきました。原曲を加工するのはミュージシャンに対して申し訳なかったのですが、加工したBGMを開発スタッフが聞いた時は、みんな爆笑していました。
柴 その加工が、逆にいい味になったと思います。
――海外のユーザーの評判はどうでしたか。
柴 日本より海外でよく知られているバンドが多く参加しているので、海外のヘヴィメタルやハードロック好きのユーザーはとても喜んでいますね。
▲海外などでNGの歌詞はピー音や爆音をかぶせる形で調整。ゲームを遊びながら聞くと、ある意味で違和感なく聞けるのが不思議! |
――横山さんは、どのようなイメージを持ちながら曲を選んでいったのでしょうか。
横山 初めにゲームをプレイしているところやイメージイラストを見せてもらい、そこから映画のBGMを思い描いて選びました。最初に柴さんへ提出したBGMは、地獄のイメージが強く影響した、デスメタルのようなかなりハードな曲調のものばかりでした。でも、より幅広い曲調がほしいという要望もあり、最終的には少しソフトな曲や旋律が美しい曲など、かなりバラエティに富んだラインナップになりました。
柴 ゲームの開発当初は、まだ全体のイメージもぼんやりとした状態でした。開発陣もわかっていなかった部分があったので、当初は曲とゲームのイメージにズレがありました。そこで、とにかくさまざまな場面をプレイしながら、横山さんに選んでもらったたくさんの曲を次々とかけて試していきました。テンションが上がる曲は重要なんですが、そればかりだとプレイに疲れてしまうということもわかったので、他のさまざまな曲調のものもお願いしました。結果として、メタルのジャンルの中でも、かなり幅広い楽曲を収録したと思います。
――横山さんが新しく曲を作った部分は、どのような流れで進んだのでしょうか。
横山 最初に見せてもらったイメージイラストは1枚だけでした。それだけで曲を作れと言われたんですよ(笑)。
柴 ひどい話ですよね。すいません(笑)。
丹沢 普段ゲーム開発を行っている時は、BGMもゲーム音楽専門の会社にお願いしてスムーズに進行するのですが、本作では何回もやり取りが必要で、意思疎通までの時間もかかりました。でもその結果、今までに聞いたことがないおもしろい曲ができあがったと思います。
横山 ボツが多くて大変でした(笑)。でも僕はモンスターや特撮ものが大好きなので、先ほど話したように映画的なイメージをふくらませたんです。そしてゲームの開発が進むに従って、柴さんから具体的な要望を聞くこともできました。完成した時は「うわっ、やべぇ、かっけぇ」と自画自賛しましたよ。でも、柴さんに聞かせたところ、「刑事ドラマのBGMみたい」と言われたこともありました(笑)。
▲横山氏は、ギガデモンのような悪そうなキャラクターも大好きだそう。正義のヒーローはずっと同じキャラが登場するが、敵キャラは毎週違うデザインのものが出てくるから、ワクワクして楽しいとのこと。 |
――提供された楽曲をゲーム中で使う際、映像面の演出とテンポを合わせるといった工夫はされているのでしょうか。
丹沢 デモシーンについては、できるだけ合わせるようにしています。例えばオープニングデモでは、前奏が終わったところで雷が落ちるといった感じですね。あとはボスの登場シーンはなるべく音楽と合わせるようにしています。中でもギガデモンの登場シーンは、かなりかみ合っているのでぜひ見てほしいですね。
柴 公式サイトでも、音楽に合わせた演出をしています。
横山 公式サイトを始めて見た時、めちゃくちゃ爆発してビックリしましたよ(笑)。
――BGMの聞きどころについて教えてください。
横山 各バンドの個性はかなりバラバラなので、どれか1つと指摘するのは難しいですね。逆に言うと、どの曲も聞きどころです。ユーザーの皆さんに、1曲でも好きな楽曲ができてもらえればうれしいです。
柴 本当にどの曲も疾走感がありますし、思わず鼻歌で歌えるようなメロディにもなっていると思います。いろいろなPVでも先行して楽曲を聴けるので、試しに聞いてみてもらえればと思います。
――ちなみに横山さんは、魔王様のTwitterを見たことはありますか?
横山 ありますよ。魔王様は僕のように見た目は怖そうだけれど、実はおもしろいやつなんでしょうね。ただ、僕のことをフォローしてくれないのは不満です(笑)。
丹沢 なぜか新垣結衣と小悪魔agehaとデーモン小暮だけをフォローしているんですよね(笑)。
――最後に、本作に期待するファンへのメッセージをお願いします。
横山 普段ライブハウスに足を運ばないと見られないようなバンドの音楽が、たくさん収録されています。日本にも、こんなにいいバンドがあるということを知ってもらえればと思います。そうすれば、本作のようなおもしろい企画が増えていくんじゃないでしょうか。
柴 いつか、本作に登場するバンドを集めて本当にライブを行いたいですね。めちゃくちゃ豪華メンバーすぎますけど(笑)。
横山 ゲームと音楽が合わさって、そのような他のムーブメントに結びついていけたらうれしいですね。
丹沢 もし『地獄の軍団2』が出るとしたら、間違いなく横山さんに音楽をお願いすることになると思います。
横山 そうなると、また楽曲を提供してくれるバンドを探すのか。……大変だなあ(笑)。
▲ラストの集合写真は、ちょっぴりメタルなポーズで。最後までユニークな横山さんでした! |
→心に響く地獄の楽曲を奏でる者たち!
本作に参加した14のメタルバンドを紹介!!(3ページ目へ)
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