2012年11月15日(木)
『マビノギ』や『マビノギ英雄伝』などを手がけ、最新作『マビノギ2:アリーナ』でもプロデューサーを務める開発会社ネクソンデブキャットスタジオのキム・ドンゴン氏にインタビューを行った。
▲キム・ドンゴン氏は、『マビノギ』シリーズのプレイヤーにとって神様みたいな存在だ。 |
――とても気になっていたのですが、『マビノギ2:アリーナ』はグラフィック的に『マビノギ英雄伝』の続編に見えるのですが、グラフィックの描写を変えた理由は何でしょう?
キム:『マビノギ』で採用しているカートゥーンレンダリングを用いたアニメ調のキャラクターは個人的にとても好きです。でも今回の作品では、新しいモノを追求するというコンセプトがあったり、“世界に通用するキャラクターを作りたい”という想いがありましたので変更しました。グラフィック的には『マビノギ』と『マビノギ英雄伝』の中間のような描写になっています。
また、『マビノギ英雄伝』は英雄の物語を描いていたのでリアルなキャラクターでも違和感がなかったのですが、『マビノギ2』のキャラクターはプレイヤーがもっと感情移入できる等身大のキャラクターにしたいと思い、リアルすぎないようにしました。ある程度ディフォルメが入っているほうが、『マビノギ』プレイヤーがゲームになじみやすいと思いました。
『マビノギ』や『マビノギ英雄伝』になかった、まったく新しい事を『マビノギ2:アリーナ』でやろうと考えています。3タイトルとも違う楽しさがありますので、『マビノギ』ファンならどのタイトルでも遊んでいただける作品になっていると思います。
▲『マビノギ』は2005年4月に日本で正式サービスがスタートし、今年で7周年を迎えた。 |
▲日本では2011年1月に正式サービスがスタートした『マビノギ英雄伝』。 |
――コンセプトの“新しいモノの追求”について教えてください。
キム:ゲームを楽しむ方法は、プレイする以外にも“ゲームを観る楽しさもある”という発想からすべては始まりました。例えば、ゲームセンターでプレイしている人と、それを観ている観客みたいなイメージですね。また、タイトルの『アリーナ』は、あくまでコンテンツの1つを指しているサブタイトルでして、これからのアップデートで『マビノギ2:タワー』『マビノギ2:ワールド』というように、革新的なコンテンツを導入する際にサブタイトルは随時変わっていくことになります。
――なるほど。ちなみに『マビノギ2:タワー』はどのような内容になるのでしょうか?
キム:塔を上って行くコンテンツを予定していますが、単に塔という新フィールドのことだけを指しているわけではありません。他のプレイヤーが各階層を冒険したり、ボスモンスターと戦っている様子を別のプレイヤーが観戦したり、応援することが可能です。『アリーナ』や『タワー』といったサブタイトルごとに新しい遊び方を提案している、と理解していただければと思います。
『タワー』や『ワールド』は大型アップデートになりますが、その合間に行う具体的なアップデートについては、ユーザーの皆さんの声や反応を直接取り入れながら、ゲームに反映させていく予定です。
▲ゲームセンターのような雰囲気をオンラインゲームでどのように表現するのか、注目したい。 |
――『マビノギ2:アリーナ』と『マビノギ』の世界観は、どのような関係にあるのでしょうか?
キム:世界観やキャラクターの一部が共通しているところがありますが、ストーリーはまったく異なる内容です。女神モリアンをはじめとする多数のキャラクターが、『マビノギ』と同じような役割で登場します。『マビノギ』のプレイヤーさんなら気づいていただけると思います。
▲この女性が『マビノギ』にも登場した女神モリアン。本作の物語に、どのようにかかわってくるのだろうか? |
――ネクソンブースの試遊台で使用できた4人のプレイヤーキャラクターについて教えてください。
キム:“G-STAR”の試遊台では、キャラクターメイキングが省略されています。最初からキャラクターが用意されているのではなく、プレイヤーが自由にキャラクターを作成することができます。キャラクターの外見やクラス、格闘スタイルなどを細かく設定して、自分だけのキャラクターを作ることが可能です。
――クラスや格闘スタイルによって、キャラクターの攻撃方法に影響するのでしょうか?
キム:そうですね。キャラクターの攻撃方法は大きく分けて、格闘攻撃(Zキー)、武器攻撃(Xキー)、掴み攻撃(Cキー)の3つがあります。格闘攻撃は格闘スタイル、武器攻撃はクラス、掴み攻撃は体型などによって、それぞれ発動する攻撃が違うんです。
――最初から使用できるクラスの種類を教えてください。
キム:最初は剣士・戦士・弓士・バード(楽器使い)・魔法士の5種類です。クラスごとにスキルを豊富に用意しており、レベルアップすることでより強力なスキルへと進化していきます。
▲格闘スタイル・クラス・体型などの組み合わせによって戦い方は多彩に変化するのが、『マビノギ2』の特徴の1つ。 |
――“G-STAR”の試遊台では、4人ぐらいの少人数でダンジョンを冒険できましたが、MMORPGのように大勢のプレイヤーと冒険することはできるのでしょうか!?
キム:ミッションの種類によって冒険するダンジョンや参加人数が変わってきます。多人数で参加できるダンジョンもあれば、1人用のダンジョンもあります。
――なるほど。『マビノギ』のダンジョンや影ミッションの仕様に似ていますね。『マビノギ英雄伝』では町で他のプレイヤーとコミュニケーションが取れましたが、『マビノギ2:アリーナ』にもそういう場所はありますか?
キム:もちろん、そういう場所は必要だと思っています。それを町にするのか、フィールドにするのか、検討しているところです。ただし『マビノギ2:アリーナ』の舞台になるのは“アバロン”と呼ばれる島になるので、『マビノギ英雄伝』の町よりも、もっと広いフィールドになると思います。
▲『マビノギ』ではおなじみの、ダンジョンの入口にある女神像。『マビノギ2』の出発地点は、やはりここからになるのだろうか。 |
――ムービーでは、動物に乗って戦うシーンがありましたが。
キム:はい。戦闘を助けてくれる動物たちをいろいろと用意する予定です。出会った動物に騎乗することもできますし、倒した敵を味方にすれば一緒に戦ってくれます。
――ゴーレムに乗って戦うシーンもありましたが、あれはフィールドに置いてあるものに乗るのでしょうか? それともプレイヤーが用意するのでしょうか?
キム:あれは“タイタン”というゴーレムで、神が支援具として贈ってくれるという設定です。基本的にフィールドで発見できますが、PvPモードでは空からタイタンが降ってくるので、それに乗って戦うことが可能です。
――ゴーレムに騎乗してのPvPですか! それは楽しそうですね。
▲フィールドに登場する様々な動物だけでなく、ゴーレムに搭乗して戦うこともできる。ゴーレム同士の迫力ある戦闘が楽しめそうだ。 |
――PvPについて教えてください。
キム:スポーツ競技のようなイメージで、いろんなモードのPvPを用意しています。例えば、先ほど少しお話した“タイタンショーダウン”というモードです。プレイヤーはチーム別に分かれてタイタンに乗って戦います。また、別のPvPモードでは、TVのバラエティ番組のような、観ている人が笑いながら参加できるモードも考えています。
――それはとてもユニークなアイデアですね。ちなみにPvPの勝敗によるメリットやデメリットはあるのでしょうか?
キム:勝つと報酬がもらえるなどのメリットがありますが、負けた時のデメリットは少ないです。さらに戦闘を観戦しているプレイヤーにも報酬がもらえるようになります。
――“アリーナ”ならではの発想ですね。
キム:そうですね。ただ、PvPだけではなく、ダンジョンなどにチャレンジしている冒険者たちの様子を観戦しながら楽しめるのも特徴です。
――『マビノギ2:アリーナ』を製作する際に苦労された点を教えてください。
キム:オンラインゲームですので、やはりラグによる遅延の問題がありました。アクションを重要視しているゲームなので、それを克服するのは至難の業でしたね。
――何人くらいのプレイヤーが同時に戦うことが可能なのでしょうか?
キム:まだ実際にテストをしていませんが、MMOサーバーで開発しているので、100名以上は同時に戦うことができると思います。
――100名が同時に戦うアクションゲームですか。それは壮観ですね!
キム:ただ、それだけの人数を表現しようとすると、必然的に高いスペックのPCが必要になります。ですから、私としてはあまり推奨していません。
――韓国では年内にクローズドベータテストが始まるとのことですが、正式サービスの開始はいつごろを予定されていますでしょうか!?
キム:正式サービスの日程は未定です。日本でのサービスも予定していますが、開始時期は未定です。すでに発表済みですが、『マビノギ2:アリーナ』とNC SOFTとのコラボレーションが計画されていますので、ここが決まればその後のスケジュールも見えてくると思います。
――どんなコラボレーションをお考えですか?
キム:まだ協議する段階ですので具体的なことは言えませんが、いろんな可能性を秘めていると期待しています。1つだけ言えるのはNC SOFTのゲームが好きなユーザーさん、ネクソンのゲームが好きなユーザーさん、双方のニーズに答えることができるのでは、と考えています。
――なるほど。本当に楽しみな夢のコラボレーションですね。他にも『マビノギ2:アリーナ』でやってみたいことを教えてください。
キム:個人的に今一番の目標は、まず『マビノギ2:アリーナ』を完成させることですね(笑)。そして、もう少し先のことになると、先ほどお話した『タワー』と『ワールド』を早く実現させることです。『マビノギ2:アリーナ』は、従来のオンラインゲームにはない、まったく新しいコンセプトのものが多いです。その点において私自身も期待していますし、未知の部分もありますのでちょっと心配でもあります。この新しいコンセプトをプレイヤーのみなさんに受け入れていただけるように、努力したいと思います。
――いつかアリーナでナクさん(※)のプレイも観ることはできますか?
※キム氏が『マビノギ』で使用しているキャラクターの名前。ゲーム内にたびたび降臨し、多くのプレイヤーから愛されている。日本の『マビノギ』プレイヤーの間でも、キム氏のことを“ナクさん”の愛称で呼んでいる人も多い。
キム:もちろんです(笑)。アリーナのコンセプト自体が、サーバー内で起こっている様々な出来事や、スタープレイヤーの戦いを実際に観ることができるという点ですからね。
――とても楽しみにします。それでは最後に日本のファンに向けてのメッセージをお願いします。
キム:『マビノギ2:アリーナ』は、これまでのオンラインゲームとは違う、まったく新しいゲームと感じていただけると思います。ですが、実際にプレイしていただくと、私がこの世界でこれまで培ってきた歴史、思い出なども同時に感じていただけるはずです。日本でのサービスが少しでも早く実現するように頑張りますので、どうぞよろしくお願いいたします。
最初に『マビノギ2:アリーナ』の映像が公開された時、多くの『マビノギ』プレイヤーが「あれは本当に『マビノギ』の続編か?」という衝撃を少なからず受けたと思います。私もキムさんにお話を伺うまでは、『マビノギ』の続編なのに、なぜ世界も、キャラクターも、雰囲気さえも変えてしまうのだろう、と単純に考えていました。それは『マビノギ』のサービスが終了し、『マビノギ2』へと移行するものだと勝手に頭の中で思い描いていたためでした。
しかし、キムさんは「『マビノギ』と『マビノギ2:アリーナ』は同時にサービスを展開しても共存できるゲームにしたい。そのために『マビノギ』と同じようなゲームを作っても仕方がない。まったく新しいモノを作るんだ」とおっしゃいました。それはある意味、私たちがイメージする続編を作るよりも困難な道になることは間違いないでしょう。
現段階では、戦闘面だけがクローズアップされている状態なので、それ以外のコンテンツはあまり見えていません。今回のインタビューでも具体的な構想までは教えてもらえませんでした。ただ、かなり多くのコンテンツを計画している、というのは感じることができました。あの『マビノギ』を作ったキム・ドンゴンさんが、今度はどんな世界へ私たちを連れて行ってくれるのか期待しつつ、新たな発表を待ちたいと思います。