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2013年7月24日(水)

【ほぼ毎日特集#22】『ギャラクシアン3』や『F/A』の裏話も飛び出すインタビュー!? 「教えて!佐宗先生&細江先生!」前編(ミゲル)

文:ミゲル

■『ギャラクシアン3』の筐体組立まで行った“ゲーム音楽作曲家”!?

――話が急にそれてしまいますが、細江さんの“メガテン”というあだ名はどこからきているんですか? 皆が気になっていることだと思います。

細江:あれは、先輩に勝手に付けられたものなんです(苦笑)。当時、ナムコでかかわっていたプロジェクトが体育会系だったんです。トップダウンと言いますか。

 当時、ゲーム雑誌に掲載されたアミューズメントマシンショーの3cm角くらいの写真に僕が写っていたんですけれど、小さいうえに俯瞰(ふかん)になっていてよく顔が見えないんですよ。その写真を見た先輩が「こいつ、目が点になってる~!」と言って、そこから“メガテン”になったんです(笑)。

――そんな『太陽にほえろ!』みたいなニックネーム付けだったんですか!?

細江:この間、バンダイナムコスタジオの社長に久しぶりにお会いしたんですが、本名は忘れられていても、“メガテン”の名前は覚えられていて(笑)。当時のナムコといえば、“電子的体育会系”でもありましたね。

――“電子的体育会系”?

細江:「基板を作れ! 以上」っていう(笑)。

佐宗:サウンド以外のプログラマーと企画マンは、自分の携わっているものの周辺機器についてわかっていなければいけないということで、基板を組み上げる新人研修がありましたね。パターン組みから基板作成までをして、その基板から絵を表示できるように作り上げるんです。

――はんだ付けとか、そういったものですか?

細江:設計もですね。プログラマーの人はまだ大丈夫でしょうけど、企画の人は大変そうでしたね(笑)。

佐宗:サウンド担当は、“自分で使うものは自分で用意(もしくは作れ)”という文化があってROMエミュレーターとかを作りました。電気工作室に行って、はんだ付けをしたりしていましたね。「あぁ~~!」とか言いながらやっていると、横で電気の先輩たちが助けてくださったりして。

 『ギャラクシアン3』の筐体を設置する時は、ヘルメットに軍手して鉄板抱えて工事現場みたいになっていましたけどね(笑)。

――!?(ヘルメット? ど、どういうことなの!?)

佐宗:アーケードの1号機の設置は、スピーカーの出音確認から全部開発が携わるんです。

細江:大型筐体の設置の時は設置マニュアルがまだできていないので、開発の人たちが組み立てに行くんです。16人乗りタイプのものは設置だけで大阪にも2回行きましたし、6人乗りタイプの『ギャラクシアン3 シアター6』ではイギリスにも行きましたね。

佐宗:イギリスは、ヨーロッパのアミューズメントマシンショー“ATEI”へ出展したので視察だったんですけれど、現地のゲームセンターに筐体を設置するというので夜中に手伝いに行きました(笑)。

細江:ゲームセンターの営業が終わってからの設置だったので、24時過ぎから作業しました。

※『ギャラクシアン3(キューブ)』とは、ナムコが開発したテーマパーク向けのアトラクション。3DCGによる、ガンシューティングゲームだ。28人乗りタイプの『プロジェクト・ドラグーン』、16人乗りタイプ、ゲームセンターに設置できる6人乗りタイプの『シアター6』が存在した。PS版への移植も行われている。

――そこまでされていたんですか!? 本当に、ゲームのすべてを知っていないといけない世界だったんですね……。

細江:ある意味“朝チュン”ですよね。あはは。

佐宗:『ギャラクシアン3』と“朝チュン”(笑)。何回、『ギャラクシアン3』と“朝チュン”したかわからないですけどね。

(一同、爆笑)

佐宗:特に『ギャラクシアン3』を作っている時は、仕事が終わらなくて“仕方がなく残業”というよりも、“おもしろくて残業”してしまう人が多かった気がします。もっと(作品を)よくしたいために残って頑張るみたいな。私もそうでしたし。

 私は、たくさんの人と1つのものを作り上げることが好きなんだと思います。それこそ、バンドや吹奏楽もそうですけれど。仕事だし、大変なんですけど、“部活ノリ”のような。

――『うる星やつら2 ビューティフル・ドリーマー』ではないですけど、“終わらない文化祭”感は確かに妙な心地よさはありますね。

佐宗:そうですね。「これがずっと続けばいいのに」って気持ちはわかりますね。大変なんだけど、それが心地よいみたいな。

細江:「ずっと続いたら過労死するわ!」ですけれど(笑)。

――当時のサウンド担当の方は、“作曲家”という側面もありますが、“技術屋さん”の側面が強い印象を私は最近持っています。

佐宗:曲を作ることとまた違う頭を使わなければいけないのは確かです。例えば、作った音を基板にのせてみた時に、「この鳴り方じゃなくて……」というのを、どうキレイに鳴るようにするか考えましたね。「やっぱりサンプリングをし直そう」とか、「容量が余ったからもう少し音を足せるな」とか。

――今はあまりそういったことは考えなくても大丈夫な作曲環境なのでしょうか。

佐宗:今はストリーミングが主なので、そんなことを考えなくていいかもしれないですね。携帯機ですと、少しまた違ってきますけれど。

――DSは独特の基板があると聞きますね。

佐宗:DSは、昔ながらの内蔵音源の叩き方ですね。逆に私たちは、“ならでは”の鳴らし方を知っているのでわかりやりやすいんですけれどね。内蔵音源はやりだすと楽しいんですよ。いかに小さい容量で音楽データを作るかとか、16音でどこまでやれるかとか。内蔵音源が好きだって言う人は“ドM”です(笑)。

細江:最近、そういったものがなくなってきてしまっているので、逆につまらないと言えばつまらないですね。

――何事も自由度が高ければ高いほどいいわけではないのですね。ある程度の制約があるからこそ、といったものなのでしょうか。

細江:自由なわりに、時間はないですからね(笑)。

“居合”に例えられる佐宗さんの作曲スタイル!?→(5ページ目へ)

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