2013年11月14日(木)
――アトラスさんは世代交代とはまた違いますが、ビジュアルにしてもサウンドにしても、次々にニューカマーが生まれているイメージがあります。
土屋:“やむを得ず”といった部分もありますが(笑)、一応サウンドディレクターなる肩書きを名乗っている手前、なるべく若手を前に押し出して盛り立てていこうという思いがあります。
本人の能力や努力だけでなく、タイトルに恵まれることも大切だと思うんです。隠れた名作はたくさん世の中にはあって、すごい作曲家ってたーっくさんいるのですけれども、せっかく素晴らしい作品なんだから、できるだけ多くの人たちの目に触れてほしい、と。なので『真・女神転生IV(真4)』は、サウンドで一番若手の小塚良太くんに曲を全部任せました。
もちろんメガテンの音楽を自分で作りたいという欲はありますが、「俺がやる! どけーっ!」みたいなことを言うよりは、なるべく顔を出さずに小塚くんのサウンドを推したほうがいい結果を残せると判断しました。
※小塚良太:『真・女神転生IV』の楽曲全般をはじめ、3DS用ソフト『デビルサマナー ソウルハッカーズ』に追加されたOP曲『#X』や、『ネメッチーのテーマ』を作曲。PSP用ソフト『ペルソナ2 罪』のアレンジ楽曲や『HOSPITAL. 6人の医師』の作曲も担当している。
アトラスサウンドチームの層の厚さを見ていただきたいところですし、自分もそろそろ若手をアゴで使って、指示1つで曲ができ上がるような楽をしたいですからね。はい、調子に乗りました。どうもすみません。
――“新しい芽を育てる”といった時に、何か気を付けていることや、教えることなどはありますか?
土屋:僕なんかが何か言うまでもなく、すでに“できる”人たちなので(笑)。見ると自分の趣味を押し付けたくなってしまうので、あえてなるべく見ないようにしています。教えるということもないですし、むしろ教わっています(笑)。皆、のびのびと……っていうか、好き勝手に伸び放題ですね。
――作曲に関して、改めて何か指示することはありますか?
土屋:音楽って、教わってできるものではないと思っています。できる人は、初心者のうちはアウトプットが下手なだけで、最初からできるんですよ。それにテクニックが伴うとうまくなったように見えるだけで、その人が持っている音楽の“軸”はそうそう変わるものではないと思います。
――確かに、同じ人の過去と現在の曲を聴き比べても、上手下手ではなくて“洗練されていっている”とは感じますね。
土屋:それは、テクニックが身に付いていった結果だと思うんですよ。音楽は、持って生まれたセンスや影響を受けてきた環境が大きいかなと。「そこはもっとこうしたほうが~」と言い出すと自分の趣味の押し付けになっちゃうので、言うくらいなら自分で作ります。
――自分の分身が欲しいわけではないですからね……。
土屋:そうなんです。小塚くんという人間をプッシュしたいんであって、それを陰から操りたいわけではないんです。
と言っても、『真・女神転生II』のメシア・プロジェクトのように、救世主を人工的に作り出して操る元老院的ポジションにいたいという気持ちはありますね。「新たな救世主・小塚よ。アトラスサウンドを世に広く知らしめるのです」みたいな(笑)。結局、元老院も自分が作った救世主に倒されちゃったりしますけれど(笑)。それでいいかな、と思っています。『真4』は、僕自身のメシア・プロジェクトでもありました。
――現在のアトラスサウンドチームには何名がいらっしゃるのですか?
土屋:今は、僕と、目黒将司さんと、小塚良太くんと、喜多條敦志くんと、小西利樹さんの5人です。
――小西さんのお名前はまだお聞きしたことかないかもです。
土屋:小西さんはもともとデバッガーだったんです。某移植作品のデバッグ時に、「採譜が間違っていました」と楽譜を書いてきた強者なんですよ。デバッグの腕が買われてプランナーになって、『ペルソナ3』や『ペルソナ4』のバトルプランナーをしていたりしましたが、そこからサウンドチームに来たっていう前代未聞の人です(笑)。
ギターがうまいので、曲を作ると小西くんに弾いてもらっていますよ。サウンドに来てからまだ日が浅く、何本かヘルプ的なことをしてくれていますが、これからの人ですね。あとは、まだ言えないタイトルのイロイロをやっていますよ!
※小西利樹:DS用ソフト『デビルサバイバー2』の楽曲制作に参加。他、PSP用ソフト『ペルソナ2 罪』、『ペルソナ2 罰』では、アレンジ楽曲や新曲を多く手掛けている。
――喜多條敦志さんはお名前をよく拝見しますね。『ペルソナ4 ジ・アルティメット イン マヨナカアリーナ(P4U)』の曲はかっこよかったです。
土屋:喜多條くんは目黒さんと同じ作品を担当することが多いせいか、インターネットで喜多條くんの曲が「さすが目黒さんの曲はいいねぇ!」と言われていることがあって、こちらももっとプッシュしていかなければなりませんね。
※2012年8月22日発売 『ペルソナ4 ジ・アルティメット イン マヨナカアリーナ オリジナル・サウンドトラック』(アニプレックス)
※喜多條敦志:2006年にアトラスに入社。『HOSPITAL. 6人の医師』、『東京鬼祓師 鴉乃杜學園奇譚』の他、多くの作品で作曲やアレンジを手掛ける。スタイリッシュなギターサウンドや、丁寧な楽曲アレンジに定評がある。
――本当に、曲を聴いているとどの方からも目が離せない感じです。
土屋:「サウンドチームのこれからの活動に乞うご期待!」ですね。
→『真・女神転生』ファンだからこそ。ファンの意見から受けるプレッシャーとは……?(3ページ目へ)
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