2013年11月14日(木)
――『真・女神転生if...』も根強いファンが多いですね。
土屋:SFC版の移植ではありますけれど、PS版『真・女神転生if...』は思い入れが強いですね。憧れの『真・女神転生』シリーズにかかわれたというのも大きくあります。
つらかったのは『ペルソナ2』の時ですが、何がつらかったのか覚えてないくらいつらかったです(笑)。「入社以来、何が一番つらかったか」と聞かれると、今ではすっかり『真4』ですけれども、それまでは『ペルソナ2』でしたね。PS自体がロードの遅い機械だったので、ハードウェア的なものも込みの苦労ではありましたけれどね。
――『ペルソナ2』は私の中で伝説的作品なので、とても気になるところではありますが(笑)。
土屋:魂が浄化されてしまって、何か“美しい思い出”だけがある感じになりつつありますけれど(笑)。
――では、せめて“美しい思い出”を……!
土屋:……悪い夢……いや……いい夢だった……。
――ワルオーッ!! ってそうじゃなくてですね……!?
土屋:あのころはハードの制約がまだまだ強い時代だったので、作りたい曲と表現できるものにすごい開きがあったんです。“本当はこうしたかったんだけど、こうせざるをえない”というものが多かったですね。
――SFCに比べるとCDママの音源をそのまま流せるなど、音楽表現の幅が広がったイメージでいました。
土屋:ダイレクトにCDを再生してしまえればできるんですが、そうすると他のことが一切できなくなってしまうんです。プログラムをロードするために、曲を1回止めないといけなくなってしまう。レースゲームとかでは無理ではないと思いますが、RPGでは難しいですね。
――なるほど。シームレスに音を流し続ける必要がありますからね……。
土屋:当時のゲーム機の内蔵音源は、要するにメモリの少ないサンプラーなのですが、それで曲を作らなければいけません。サウンドメモリとして500KB与えられた中で、300KBくらいが効果音。200KBで2曲……つまり100KBで1曲を作らないといけませんでした。普通の音楽CDが1分で10MBくらいある中、100KBってなんだよっていう(笑)。
ドラムの音のポンッて音を0.2秒くらい、シンバルのパーンッという音を0.5秒くらいとメモリに乗っけておいて、ピアノもドの音だけを録って音程を変えることで音階を作ったりするんです。でも、音程をあんまり変えるとチューニングが狂っていくので、上の音程になればなるほど曲が不思議なことになってしまうんですよ。
――運用方法を考えながら曲を作らなければいけないんですね……。
土屋:音源の得手不得手をうまく使って、あんまり無理なことをやらないほうが結果がいいのかなとは思っていましたね。
『初音ミク』のいわゆる“調教”に通じる作業ではあります。細かいテクニックをデータに突っ込みすぎると奇妙になっていくので、どこまで自分が頑張るか、どこまで機械に任せるかという選択は大変でした。
――音楽だけでなくて、効果音や敵のボイスもスムーズにたくさん入っていたので、そんな苦労があるとは知りませんでした。
▲土屋さん愛用のレコーダー。風よけの帽子がかわいい! |
土屋:『ペルソナ』シリーズもそうですが、『真・女神転生』シリーズは敵に声をあてるのが困難なゲームなんです。敵と会話ができますが、敵の見た目が“ヘビ”であったりするのに、「人間よ……」なんて偉そうなことを言うじゃないですか。「え! 声はどうするの!?」という、絵と声のかい離をどうするかという問題は、今も解決できずにいる感じですねぇ……。
――社内の皆さんの声が入っているのも有名ですよね。
土屋:いろいろ入っていますよ。いろいろ録られて、いろいろ辱めを受けて……(笑)。でも効果音の基本は“自分でしゃべる”ことなので、結構いろいろなところに自分の「ぐげー」とか「うへー」とかの声は入っています。
『ペルソナ3』や『ペルソナ4』のシャドウの声も、自分が「ベロベロ」とか言ったりしていますよ(笑)。
→最新作『P4U2』のサウンドはここに注目!!(5ページ目へ)
(C)Index Corporation 1996, 2011
(C)ATLUS 1992,2001
(C)ATLUS 1994,2002
(C)ATLUS 2002