2013年12月10日(火)
▲近藤さんが手掛ける『軌跡』シリーズの最新作『英雄伝説 閃の軌跡』。 |
近藤:そもそもファルコムはPCでゲームを作ってきたメーカーですので、パッチの追加は10年以上前から行ってきたことなんですよ。例えば、必須環境を満たしているのに動作不良があった時は我々の手落ちですので、ユーザーサポートの延長として対応しなければいけません。また、こんなパッチを追加してほしいというユーザーさんからの要望にも、できる範囲内で一生懸命応えてきたと思っています。なので、コンシューマで展開していこうとなった当時、パッチが当てられないと知ってちょっと緊張しました。
浅野:3DSもパッチを当てることができますが、3DSのお客様からパッチに関する意見をいただくことはあまりないですね。
近藤:PCゲームのユーザーさんは、昔からパッチという言葉を知っていましたけれど、パッチという言葉がここまでメジャーになるとは思いませんでした。
齊藤:僕らなりに万全に作ったつもりでも、何万人ものユーザーさんに遊んでもらうと、作り手が見逃していた部分や、作り手側で思いもよらなかった意見や感想が出てきますよね。それを吸い上げての対応ができるようになったのはよいことだと思います。
パッチがなかった時代は、ユーザーさんの意見をどこで反映させるのかというと、続編を出すしかなかったんですよ。「ここのバランスさえよければ……」という意見を聞いて「よしわかった! じゃあ2年後の続編で!!」というのは、すごく遠い。もっと満足度を上げたり、不満だった点を改善したりできるというのは、僕らにとってもユーザーさんにとってもいい体験になると思っています。
ただ、ネット環境自体がなく、最初の状態でずっと遊ぶしかないというユーザーさんもいますので、パッチに甘えたくはない気持ちは当然あります。最初からパッチを当てなくてもいいように作るのが理想的で、それでも想定外でこぼれてしまった部分に関しては迅速に対応する。そのための手段がパッチだと捉えています。
齊藤:RPGの歴史は30年から40年近くありますが、子育てRPGがいまだに初めてだったことを考えると……。まだ、そんなにボコボコと新しいジャンルが出てくるわけではないと思いますね。『コンセプション』自体も根底はRPGで、あくまでその中にシステムとして尖ったものが入っている形です。RPGというジャンルを変えるほどのRPGは、そうそう出てこないんじゃないかというのが、1つの予想としてあります。
ちょっとカッコいいことを言うと、スパイク・チュンソフトは『ダンガンロンパ』でアドベンチャーというジャンルの壁を壊し、ハイスピード推理アクションという形を打ち出しました。同じように根底にRPGがありつつも、その壁をぶち破るのがうちでありたいと思っています。まあ、スパイク・チュンソフトがソフトを出す場合、そこまでしないと皆さん納得していただけないというのもありますが(笑)。
だからといって、正統派じゃダメなのかというと、そういうことじゃないんですよ。僕自身が正統派で育ってきた人間ですし、正統派なものはスクウェア・エニックスさんやファルコムさんが出してくれるじゃないですか。だから逆に、正統派があるからこそ、僕たちにしか作れないものを作るという勝負をしています。
浅野:先ほど(特別鼎談・前編)もお話したように、今は価値観がすごく細分化されていて、あらゆるタイプのゲームが無数に出ています。なので、この分野が好きな人にはこのサービス、というものをちゃんと提供していかないと続けられない面があります。ですが、そんな状況をブレイクスルーできるRPGというのは、まったく新しいものになると思います。細分化された中のどこにも属さず、カテゴライズできないようなものが、大きく化けるのではないでしょうか。それは、もはやRPGではないのかもしれませんが。
近藤:いつか、HP(ヒットポイント)に変わるシステムを考えたいですよね。私たちは、どんなRPGを作りたいかと問われると悩むのですが、今までやってきたことを振り返ってみると、その時に集まっているスタッフの力、得意な分野で最大限できることをやってきたと思っています。
例えば『軌跡』シリーズでは、キャラクターやシナリオが好きなお客様が多いのですが、それは、たまたま私や同期の人間が『白き魔女』が好きでファルコムに入ってきて、シナリオを見られる人間がいたということなんですよ。じゃあ、うちはそれで勝負していきましょうと。
ファルコムは、割と平均的な人間がそろっている会社で、グラフィックはスクウェア・エニックスさんにはなかなかかないませんし、スパイク・チュンソフトさんのように、尖ったものを出す勇気もないかもしれません。ただ、社員1人1人が、平均よりもどこか頭1個だけ抜け出ている部分を必ず1つは持っているんです。それを集めて勝負できるものにしていくのがファルコム流なので、シナリオが得意なスタッフがいなくてアクションが得意な人間がいれば、『イース』のようなアクションばかり作っていたかもしれません。また、齊藤さんのようなファッションセンスのある方がいれば、現代物をやっていたかもしれない。
自分は経営者も担当していますので、スタッフの力を引き出すのにどうしたらいいのかを常に考え、どう行動したらいいのかということを意識していることが多いですね。その結果として生まれたものが、今の『軌跡』シリーズや『イース』シリーズです。
――ファルコムさんが『子作りRPGの軌跡』とかを出してきたら、ファンは困惑すると思います。
近藤:本音を言えば、そういう尖ったものも作ってみたいですけどね(笑)。
齊藤:ぜひ、いつかコラボレーションしたいです!
近藤:この鼎談の場を客観的に見てみると、ゲーム業界っておもしろいなと思います。それぞれゲーム作りに対するスタンスもやり方も違いますし、1人1人の格好も違いますよね。逆に、皆が同じ格好をしていないのがゲーム業界のいいところなんでしょうか。そうして生まれるのが、ファルコムとスパイク・チュンソフトが贈る“ファンタジー子作りアクションRPG”と。
齊藤:それ、最終的にうちの会社がお叱りを受けて終わるパターンですよね(笑)。
(C)SQUARE ENIX CO., LTD. All Rights Reserved.
MAIN CHARACTER DESIGN : Akihiko Yoshida.
(C)2013 Nihon Falcom Corporation. All rights reserved.
(C)Spike Chunsoft Co., Ltd. All Rights Reserved.
データ