2012年2月18日(土)
▲質問に答えてくれた大崎プロデューサー。開発が佳境に入っているらしく、3時間睡眠でイベントに駆け付けたのだとか。 |
――まず、3DSで開発することになった経緯を教えてください。
大崎:ぶっちゃけると、「会社から3DSでやってみろ」という指令がきたんです。まぁ、人間、制限がある中で考えるのもいいかなと(笑)。その時3DSは出たばかりで、ウチは技術好きなところもあるので、髙部くんと「未来っぽいことをやってみない?」という話になり、“未来ガジェット”を作ることにしました。それで、ゲーム+未来ガジェットというコンセプトが決まりました。要するに、藤子不二雄作品のようなワクワクする未来をミクさんで作ろうということです。ミクさんはちょうど未来っぽい部分もありますので、クリプトンさんとお話をして、企画がスタートしました。
――体験会にたくさんユーザーがきていますが、反応をご覧になっていかがですか?
大崎:誰も来なかったらどうしようと思っていたので、ほっとしています。我々はアーケードのゲームや移植作を作ることが多くて、コンシューマの完全新作を担当するのは初めてだったんです。
髙部:いつもネット越しでしか反応を見られていないので、オフ会に参加するようなビクビク感がありました(笑)。
――本作の見どころを教えてください。
大崎:たくさんあるんですけど、遊びやすくしているので、そこを見てほしいですね。あと、音にはこだわりました。3DSは、すごく音がいいんですよ。もとはアーケード屋なので、ボタンを押したらいい音が返ってくるようにしようと。某FPSゲームでヘッドショットした時の音とかすごくいいじゃないですか。アクションした時に、あぁいう音がちゃんと返ってこないと、ゲームはダメなんですよ。
髙部:長押しして離した時も音がするようになっているんですけど、ロングトーンが頻発して出てくる譜面だと、今までにない快感が得られると思います。あとはキャラクターのかわいさですね。本作は“まるっとかわいい”というキャッチフレーズを使っているんですけど、遊んでみるとその“まるっと”という立体感をわかってもらえると思います。これはぜひ実機で味わってほしいですね。
大崎:ミクさんたちの髪の固さも、最初はぐにゃぐにゃしていて“ねんどろいど”っぽくなかったんです。でも逆に固くすると塊が動いているみたいになってしまって。我々がいつも目指しているのは“リアル”ではなく“リアルっぽい”なんです。『バーチャファイター』でも、人は普通、蹴られてあんなきりもみで吹っ飛ばないんで(笑)。
▲現在判明しているGUMIが歌う収録曲は『ハッピーシンセサイザ』と『マトリョシカ』の2曲。どちらも非常に人気の高い曲だ。 |
――今回GUMIが登場しますが、登場することになった経緯を教えてもらえますか?
大崎:プロジェクトマネージャーの内海(※内海洋さん)が、「みんなが聴きたいものを入れたいよね」と言っていて、そういうシンプルな理由で決まりました。曲もポップなものを入れたいなと思っていて、最初に決まったのが『ハッピーシンセサイザ』だったんです。それで調整をして、こういう形で入るようになりました。まぁ、『マトリョシカ』もそうですけど、「みんな遊びたいでしょ?」と。
――先日の“ワンダーフェスティバル2012[冬]”でGUMIの“ねんどろいど”化が発表されたのは、ゲームに登場することが決まったからなのでしょうか。
大崎:特に関係はないと思います。並行してグッドスマイルカンパニーさんも企画を進めていらっしゃったのではないでしょうか。
――今回収録される『逆さまレインボー』は、内海さんが好きな曲として挙げられている(※2010年9月6日の記事の最後を参照)と思うんですが、これはやはり、内海さんのリクエストなのでしょうか?
大崎:そうです。キリッ。
(一同笑)
大崎:ただ、もちろん意図はちゃんとあります。『-Project DIVA-』の家庭用とアーケード、そして今作と、曲の雰囲気がなんとなく違うんです。今作では、きらきらしたイメージの曲を入れたかったので、初期の曲ですが選ぶことになりました。
髙部:デュエット曲を入れたいという考えもありました。
――キャラクターを変えるとボーカルも変わるというシステム“ボーカルチェンジ”がありますが、これについて苦労したところはありますか?
大崎:我々より、むしろPの方たちが苦労したんじゃないかなと思います。Re:nGさんのように「お祭りだから」と全キャラ作ってくれたりとか、逆にポリシーがあって「この曲はこの子だけ」という方もいましたし。そこの交渉は大変でした。
髙部:それぞれ、使い慣れているボカロとそうでないボカロがいるので、無理強いもできませんしね。
大崎:同じVSQファイル(ボーカロイドの発声データ)を読み込ませると、別のボカロでもその通りに歌うんです。でも、やっぱりそのボカロ専用に調整する必要はありました。
髙部:くちばしPさんみたく、こちらからお願いしていないのにそれぞれ歌詞も変えて対応してくださった方もいました。
大崎:あとボーカルチェンジをするとコスチュームも用意しないといけないので、それを用意するのも大変でしたね。コスチュームを用意したから、ボーカルチェンジを作るなんてことも曲によってはあったような気がします(笑)。コスチュームは、デザインと音源の一致が今回できたのでよかったですね。『-Project DIVA-』ではできなかったので。コスチュームは、絵師さんもキャラごとにどう差別化するか頭を悩ませていたようですけど。
――ARカードが今回の魅力の1つだと思うんですが、開発スタッフの中で流行っている使い方を教えてください。
大崎:“手乗り”はやりますね、まず。
髙部:ジオラマを作りたいと思っているんですが、すでに動画を見るとクオリティの高い物を作っている方がいるので、これは負けていられないぞと思いました(笑)。
髙部:僕らは“エクストリームミク”と呼んでいるんですが、極限の状態に連れて行って記念写真を撮るとかも話に上がりましたね(笑)。
大崎:最初の企画書では、マッターホルンの頂上でミクと撮影もできます! と書きました(笑)。それは冗談としても、旅行などでいろいろなところに“ねんどろいど”を持って行って写真を撮る人もいるので、そういう風になればなと思います。
髙部:ARは背景あってのものなので、いかにおもしろい背景で撮るのかというのが、AR職人さんの腕の見せどころなのかなと。
大崎:Miiを横に呼べるので、今まで自分のMiiをちゃんと作っていなかった人は「作らないと!」と思うんじゃないでしょうか(笑)。
――写真はSDカードに書き出せるのでしょうか?
大崎:はい。できます。
――写真コンテストなどを開かれる予定はないのでしょうか。
大崎:(広報を見て)どうなの?
広報:おもしろいと思います。今のところそういう予定はないのですが、今後の展開としては十分考えられると思います。
大崎:なんて無難な(笑)。
――すれ違いで弾幕コメントを交換できる機能がありますが、それについても教えてください。
髙部:3DSの機能のショーケースのようなソフトにしたかったので、ある機能を全部使いたかったんです。最初考えたのは写真の交換なのですが、動画で広がった文化なので、それを生かさない手はないなと。何かしらソーシャル性は出したかったので、コメントと噛み合うんじゃないかと思い付いて、仕様をどんどん決めていきました。
大崎:お忍びでつまんない動画をアップしたことがあるんですけど、自分の動画にコメントが付くとうれしいんですよ。動画サイトでもAA(アスキーアート)で“初音ミク”と作ったりと凝る人がいますが、本作でもコメントをデコレーションできるようになっているので、挑戦してほしいですね。ミクさんが生まれた場所のオマージュという感じです。
髙部:携帯ゲーム機なので、動画サイトのコメントのようにはいきませんが、編集ツールなどを入れているので、それを活用してもらって、自分なりの気持ちいい弾幕を作る。そこまでも含めてゲーム性として楽しんでもらえればと思っています。
――本作では、オープニング曲『ゆめゆめ』を、DECO*27さんが新曲を書き下ろしていらっしゃいますが、これについても教えてください。
大崎:DECO*27さんはかわいい曲が多く、僕がこういう曲がいいなと思っていた曲と近かったんです。それでお願いしました。
髙部:地下のカフェテリアで、2人で「“毒っけのない明るい未来”の曲を作れる人は誰かな」と話した時にDECO*27さんの名前が挙がって、その場でケータイに電話をかけてお願いしたんです。それですんなり決まりました。あと、実はタイトルとも関連があって……。
大崎:今作には、最初“初音ミク and Future Stars 未来の扉”というサブタイトルがついていたんです。でも、『Project mirai』でイベントに出展したら、これでいいんじゃない? と言われてしまって(笑)。
髙部:なので、『ゆめゆめ』の歌詞には“未来の扉”というフレーズが入っているんです。
大崎:最初上がってきた曲を聴いた時に、「いい曲きた! これは勝つる!」と思いました(笑)。あと映像もいいんですよ。アニマさんにお願いしているんですが、『HMO』のムービーで有名だったので、安心感がありましたし、期待通りでした。
▲『ゆめゆめ』は、画像のOP映像に加えて、リズムゲーム用のPVも別に用意されている。 |
――最後に、ユーザーへのメッセージをお願いします。
大崎:初めてiPodやiPhoneを買った時ってうれしくなかったですか? これ持ってると時間も教えてくれるし遊べるし、いろんなアクションしてくれるし。ドックに置いて見ているだけでも楽しい。本作もそういうアイテムなんです。先ほど言った通り、アーケード屋っぽくこだわったところもありますし、遊びの幅も難易度も広く作りました。“未来ガジェット”を楽しんでください。
髙部:今回はフル尺で曲を入れているところにこだわりがあって、PVも歌に合わせて作ったので、持っているだけで満足できると思います。あと、まだ発表されていないギミックも満載ですので、実際手に取ってもらって、「こんなものも仕込んでいたのか」とナナメ上っぷりを堪能してもらえればと。
大崎:「使いたかったんだ、この機能~」とかね(笑)。
髙部:というところで、楽しみにしていてください。
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