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2012年11月6日(火)

AVGにはもっとゲーム性を、メーカーにはもっとチャレンジをしてほしい――MAGES.に入社した高橋名人にインタビュー

文:電撃オンライン

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■高橋名人はSTGよりもRPGが好き?

――高橋さん自身、最近はどのようなゲームをプレイされていますか?

高橋名人インタビュー

高橋:今ハマっているのはスクウェア・エニックスさんの『ブレイブリーデフォルト』(※5)です。あのゲームは『ファイナルファンタジーV』(※6)や『ドラゴンクエストIX』(※7)のいいところを継承しながらソーシャルゲームの要素も取り入れていますよね。携帯のゲームとしてかなり完成されていると思います。少しバランスのチューニングが甘いかなと感じる部分もありましたけどね。このゲームは1度『ゲッチャ!』で取り上げましたが、もう1度やってもいいかなと感じています。こういう素晴らしいゲームこそ売れてくれないと!

――本当にそう思います。高橋さんといえばSTGのイメージが強いですが、このジャンルで最近気になったものは?

高橋:こちらも『ゲッチャ!』で取り上げたこともありますが、アルケミストさんの『ぎゃる☆がん』(※8)ですね。とてもいいシステムのゲームなのにあの設定なので、恥ずかしくてプレイしづらい(笑)。ぜひ他のユーザー層に向けても敵がロボットや宇宙人になったバージョンを開発してもらいたいです。アルケミストさんは『それゆけ!ぶるにゃんマン』(※9)についても同じですね。いいゲームなのに本当にもったいない!(笑)

――ユーザーを極端に選ぶゲームではありますよね(笑)。

高橋:STGで言うと5pb.の『バレットソウル -弾魂-』(※10)も大好きで今でもプレイしています。私は弾幕系STGが苦手なのですが、『バレットソウル』は敵を撃破することで弾幕を消すことができるため、どちらかというと敵を撃って進んでいく昔ながらのSTGなんですよ。ただ、少し下手になってしまってコンティニューしないとクリアできなくなってしまったんです。そのため、今年の目標はこのゲームをノーコンティニューでクリアすることです!(笑)

――仕事じゃないのにすごい執念ですね(笑)。ブログなどを拝見すると趣味でもゲームをたくさんプレイされているようですね。

高橋:はい。この20年でいろいろとゲームは変わりましたが、やっぱりおもしろいですね。一番変わったのはAVGだと思いますが、ちょっと今の主流となるテキスト型には不満を持っています。昔のコマンド入力式とまでは言いませんが、もう少しゲーム性を上げてもらいたいですね。

――科学アドベンチャーシリーズは比較的ゲーム性が高いですよね。

高橋:そうですね。ただ、自分的にはもっと複雑でもいいのかなと。例えば『ROBOTICS;NOTES(ロボティクス・ノーツ)』(※11)ならロボットを組み立てる方法がもっとたくさんあっていいと思うんです。それで間違えた手順を踏むと違った展開になってしまうとか。

――物語に集中したいというユーザーも多いのかなと思います。

高橋:ええ、もちろん市場が求めていることはわかっています。そういったAVGは残したままで私たちのようなゲーマー向けのAVGもまた開発してもらえればなぁ……と思います。

――長い歴史を持つジャンルですからね。これからもずっと残っていくでしょうし、もう少しジャンル自体の幅が広がってもいいと思います。先ほど『ロボティクス・ノーツ』を例に出されていたりと、高橋さんがAVGにも造詣が深いことにも驚きました。

高橋:よく「高橋名人と言えばSTGだ」と思われる方が多いのですが、私が一番好きなのはパズルゲームとRPGですからね!(笑)

――え!?

高橋:むしろ私はSTGがそんなに得意ではないんですよ。

――ここにきて驚きの事実が(笑)。

高橋:一番プレイしているのは『立体ピクロス』(※12)ですよ。いまだによくプレイしています。

■メーカーにはもっとチャレンジしてほしい

――最後に業界内の方々とビデオゲームを愛するファンの皆さんにひと言いただいてもよろしいでしょうか。

高橋名人インタビュー

高橋:どうしても利益に走りがちになってしまっていますが、メーカーさんにはもう少しチャレンジをしてもらいたいですね。昔は誇らしい日本の文化だったものが廃れていってしまうのは我慢ができません。なんとか頑張ってほしいと思います。また、ユーザーさんにはパッケージだけではなく、ダウンロード専用のゲームがあることに注目していただきたいです。この市場には安くて楽しいゲームがたくさんあります。ユーザーさんが注目してくれればメーカーの意識もまた変わってくると思うんですよ。

――確かに日本にはパッケージにこだわる文化が残っていますね。

高橋:パッケージがよくないということではないんですが、ACTやRPGの追加ステージなどの販売も、ダウンロードだからこそできることだと思うんですよね。個人的には5pb.にダウンロード専売の音ゲーを出してもらいたいんです。音楽事業も手掛けている会社ですので使える楽曲がたくさんあると思うんです。好きな楽曲だけ購入してプレイできるような形にしてもらえればおもしろいと思うんですけどねぇ……。

――確かにそれは気軽に遊べてよさそうですね。『メモリーズ・オフ』シリーズ(※13)や科学アドベンチャーシリーズなどシリーズごとに固定のファンもいると思いますし。これはもう発売していただくしか!

高橋:はい。もしも発売できることになったら私も張り切って宣伝させていただきます。やるからには100万本を目指しますよ!

●高橋利幸氏プロフィール

 ファミコン名人として1985年より活躍。2011年5月31日までハドソンの社員であったが、2011年6月1日付けでゲッチャ・コミュニケーションズに入社。事業譲渡という形で、2012年10月に株式会社MAGES.に移籍した。

※1……1996年にソニー・コンピュータエンタテインメントから発売されたリズムゲーム。
※2……両名ともに『バイオシリーズ』ファンとして有名。その腕前はTV番組などを通じて確認されている。
※3……TVアニメ『BTOOOM!』にて本人をモデルにした鷹嘴(たかのはし)役で出演。
※4……高橋名人を主人公とした、横スクロール型ACT。『5』のCMには高橋氏本人が出演している。
※5……『光の4戦士 -ファイナルファンタジー外伝-』の主要スタッフ陣による新作RPG。クリスタルが輝きを失った世界を救うため、少年ティズと風のクリスタルを司る巫女アニエスが冒険を繰り広げる。
※6……スーパーファミコン用ソフト。ジョブとアビリティによるキャラクターの豊富なカスタマイズ性が話題に。
※7……『ドラゴンクエストIX 星空の守り人』。DSのワイヤレス通信機能を使い、他のプレイヤーとマルチプレイを楽しむことができる。
※8……アルケミストから発売されたSTG。ひょんなことからモテモテになった主人公が、言い寄ってくる女の子を眼力(がんりき)で撃ち落としてメロメロにしていく。Xbox 360で発売された後、追加要素を加えたPS3版が発売された。
※9……『それゆけ!ぶるにゃんマン Portable ~とりもどせ!あいとせいぎときぼうのつにゃ缶~』。簡単操作で爽快感あふれるゲームが楽しめる。
※10……5pb.より発売されたXbox 360用STG。一見すると弾幕系STGだが、敵を撃破することで、その敵が出した弾が画面上から一掃されるため、避けることよりも攻めることが重要になっている。
※11……『CHAOS;HEAD』、『STEINS;GATE』に続く“科学アドベンチャーシリーズ”の第3弾。中央種子島高校のロボット研究部に所属する少年少女たちの物語を描く。
※12……DS用ソフト。数字をヒントに不要なブロックを壊して、隠されたカタチを完成させていく。
※13……切ない恋愛を描いた人気シリーズ。

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