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2012年11月13日(火)

“ジョージ・ワシントン”なら知ってる──『アサシン クリードIII』の劇中で出会えるアメリカ独立戦争で活躍した偉人たちのお話

文:イトヤン

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■ラファイエット
~アメリカで“英雄”となったフランス貴族が後年に味わった苦悩とは?~

 日本で一般に“ラファイエット”として知られている人物は、正確には“マリー=ジョセフ・ポール・イヴ・ロシュ・ジルベール・デュ・モティエ”という名前です。彼はフランスの貴族であり、その称号は“ラ・ファイエット侯爵”となります。名前だと思われているのはじつは爵位なのですが、アメリカでも“ジルベール・デュ・モティエ”という名前よりも、“ラファイエット”と呼ばれることが多いようです。

 フランス名門貴族の家督をわずか12歳で継いだラファイエットは、アメリカ独立戦争への援助を求めるフランス社交界で行われた勧誘に応じて、義勇兵として参戦することを決意します。大陸会議が渡航費用を出せないと知ると、自分で帆船を購入して1777年6月にアメリカに上陸しました。ラファイエットは当時、まだ19歳でした。

『アサシン クリードIII』

 ジョージ・ワシントンとともにニューヨークやニュージャージー、ペンシルバニアなどで戦いを繰り広げ、ヨークタウンの戦いでは重要な役割を果たしてアメリカに勝利をもたらした彼は、アメリカとフランスの双方で英雄として讃えられます。

 アメリカ独立運動の根底に流れる、自由や平等の思想に大きく影響されたラファイエットは、貴族の身でありながらフランス革命の中心人物となり、1789年に“フランス人権宣言”を起草します。

 ラファイエット自身は、イギリスのように国王の権威の下で議会を運営する立憲君主制を望んだのですが、王政そのものを否定する共和制を支持する声が高まると、彼は立場を失います。1792年8月、国王一家が幽閉されると、身の危険を感じたラファイエットはオーストリアに亡命。革命の混乱の中、ナポレオンが権力を握った1799年になってようやくフランスに帰国し、故郷で引退生活を送れるようになります。

 皇帝となったナポレオンがワーテルローの戦いで敗れ、フランスに王制が復活すると、市民の間に再び不満が高まっていきます。1830年に“七月革命”が起きると、事態の収拾のために担ぎ出されたのは、引退していたラファイエットでした。パリ市庁舎のバルコニーに、ラファイエットが“国民王”ルイ=フィリップを伴って現れると、パリ市民は歓呼の声を上げました。しかし翌年、彼は立憲君主制が実現した新政府を離れると、1834年5月20日にこの世を去ります。

 ラファイエットは若くしてアメリカ独立戦争の英雄となりました。しかしその後は、アメリカで得た理想と祖国フランスの現実との間で、ずっと振り回される人生を送ったのです。

【COLUMN】アニムスのデータベースの記述は信用できない!?

 『アサシン クリード』シリーズをプレイしたことがある人なら、ゲーム中に出会った人物や訪れた場所について、詳しい解説の文章を読むことができる“データベース”の機能があることを知っているはず。あの機能は非常に便利だし、読んでいておもしろいものですが、なんだかちょと文章にクセがあると思ったことはないでしょうか。

 実はあのデータベース、現代編の主人公であるデズモンド・マイルズが、アニムスを使って先祖の記憶を追体験している間に参照するための機能として用意されているという設定になっています。そしてデータベースの文章は、デズモンドをサポートする現代のアサシン教団の一員として、ゲームにも登場している歴史家のショーン・ヘイスティングスが執筆しているということになっています。

『アサシン クリードIII』
▲ちっとも少しじゃないショーンの付け加え。イギリス側の視点なので、“大陸軍”ではなく“反乱軍”と表記されている。

 ショーンは元々、皮肉屋の歴史オタクらしく、データベースの文章にも以前から、彼自身の主観に基づく見解を盛り込んでくることがありました。そして今作においては、彼の母国であるイギリスに大きくかかわる話ということで、その傾向がかなり強くなっています。

 『アサシン クリードIII』のデータベースでは、アメリカ独立戦争で起こった事件や、アメリカ側の人物についての解説の中に、イギリス側の視点から分析を加えた、場合によってはイヤミとも受け取れるような記述が含まれているケースが見られます。実際の歴史と異なる……とまではいかないのですが、中立的な見方からはちょっとズレた意見も少なくありません。イギリス人らしい皮肉が混じったものだと理解して読む分にはニヤリとできる内容なのですが、これをまるごと真に受けて、歴史のテストにそのまま引用したりすると(特にアメリカ人から)怒られる場合があるかもしれませんのでご注意を!

 今回までの記事にて、コナーが生きた時代の背景を知ってもらったところで、次回は『アサシン クリード』シリーズのもう1つの物語である、アサシン教団とテンプル騎士団、そして現代編とデズモンド・マイルズについての解説をしていきましょう。

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