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2010年3月16日(火)

【経営者は語る 第4回】ガンホー社長兼CEO森下一喜氏に聞く、同社の新戦略

文:電撃オンライン

■主戦場は携帯電話へ──シフトしていくプラットフォームの進化にいち早く対応

──本日はよろしくお願いします。『ラグナロクオンライン』の国内サービス開始は、2002年のことになりますよね。それから7年、日本のMMORPGサービス、オンラインゲーム業界もいろいろと様変わりしたと思います。森下さんはそうした変化をどのように見ていますか?

『【経営者は語る第4回】ガンホー・オンライン・エンターテイメント 森下一喜氏』

ガンホー・オンライン・エンターテイメント 代表取締役社長兼CEO 森下一喜氏(以下、森下氏):ガンホーという会社を起し、『ラグナロクオンライン』のβサービスを開始したのが2002年8月です。そして2002年の12月に正式サービスを開始しました。本格的にブレイクしたのは、正式サービス開始後といってよいと思います。

 その後オンラインゲームはタイトル数も増え、新しい会社さんもいろいろ出てきました。これ自体はたいへんよいことですが、過当競争化したのも事実です。ビジネスモデルも、月額課金制から基本無料・アイテム課金制へと、デファクト・スタンダードが移行しています。そして、このところ出てくる作品は、家庭用ゲーム機を中心としたハイスペック指向と、ブラウザゲームやSNSアプリを含んだローエンド指向に、二極化していますね。

──なるほど、大きく見て市場が分かれてきていることが着目点ですか。

森下氏:実はその傾向は、オンラインゲームに限らず家庭用ゲーム機市場でも、起きていると思います。据置型ゲーム機の路線か、それとも携帯型ゲーム機のようにカジュアル路線を目指すか、ということです。ミドルエンド層が薄くなりつつあるという気が、正直していますね。

──それはそのとおりかもしれませんね。さて『モンスターハンター』シリーズしかり、『ドラゴンクエスト』シリーズしかりで、昨年(2009年)には既存の大型コンテンツが、携帯型ゲーム機にしっかり地歩を築いた印象があります。確かに二極化傾向は、家庭用ゲーム機市場をも含んだ大きな流れなのかもしれません。スマートフォン(iPhoneなど)や通常型の携帯電話を含め、全体にゲームプラットフォームが拡大するなかで、森下さん自身が「おもしろい」と思う動きなどはありますか?

森下氏:もちろんPCオンラインゲームの変化には引き続き注目しているのですが、やはりゲームプラットフォームが携帯電話にシフトしていく流れが、最も注目すべき動きだと思います。例えばSNSの最大手企業にしても、すでにユーザーの過半数は携帯電話でアクセスしていると聞きます。そうした動きを考えれば、長らくPCをホームグラウンドとしているオンラインゲームも、携帯電話へとシフトしていく必要がある……。これが、『ラグナロクオンライン Mobile Story』に乗り出した理由です。ゲームとしてのクオリティはきっちり作り込んでいますし、たとえ端末が携帯電話であっても、完全なMMORPGとして遊べるようにしたつもりです。

──MMORPGの次なる舞台は携帯電話になるんだ、ということですか。

森下氏:PCのオンラインゲームがなくなるというわけではなく、それはそれで発展していくと思います。それとは別に新しいプラットホームが出てきたわけです。特に無線LANのホットスポットすら不要な携帯電話には、大きな可能性を秘めています。ゲームユーザーの裾野を広げるという可能性です。なにしろ『ラグナロクオンライン Mobile Story』については、開発会社を僕自ら探して訪ねていったくらいですから(笑)、ビジネスとして大きな期待をかけています。

──ただガンホーの事業全体を見てみると、PCオンラインからスタートし、ゲームアーツを子会社化したり、家庭用ゲーム機各プラットフォームに対応し、ジー・モードとも提携して携帯電話市場にもコミットしましたよね。そして『ラグナロクオンラインDS』で、ニンテンドーDS向け作品の開発も手がけている……。それらを前提にしたうえで、現在は携帯電話市場に注目すべきという判断になる、と。

『【経営者は語る第4回】ガンホー・オンライン・エンターテイメント 森下一喜氏』

森下氏:プラットフォームの消長は、誰にもなかなか予測できません。その中でゲームメーカーは、常に柔軟性を持って事業を展開するしかないと思います。ある方向に固執すると、それが結果的に足枷になりますから。その意味で僕は、多角的にやっているというより、柔軟にやっていると考えています。それがマルチプラットフォームの意味するところです。

 そして現在の流れの中でいえば、PCから携帯電話へと少しずつ手を伸ばしていくのは、ある種の必然だと考えています。例えば2002年の時点では、現実として携帯電話でMMORPGをプレイしようという発想はなかったわけです。

──そうですね。当時はまだ、インターネットへの接続サービスプランのレベルで、成り立たせようがなかったと思います。

森下氏:ですが、プラットフォームは進化していきます。それにいち早く対応して、先に市場を確保することは、たいへん重要だと考えています。PCから家庭用ゲーム機や携帯電話へとタイトルが展開していくのは、自然の流れかなあと。

 オンラインで展開されるゲームを主軸としている点は変わらないけれども、出口に関する戦略は、今後を見据えて展開していこうと。そこでは、例えば『ラグナロクオンライン』というブランドを、スムースに時代の流れに乗せていかなければなりませんし、次の世代のプラットフォームでも遊んでもらえるようにしていかなければなりません。

──なるほど、マルチプラットフォームは時間軸方向にも広げていく必要がある、ということなんですね。

森下氏:そうです。その一方で新しい作品を生み出していく必要があるわけですが、そこでは「どのプラットフォームで展開するか」ではなく、「何をしたいか」をまず考えて、それにベストな舞台を選べばよい。それは携帯電話であるかもしれないし、家庭用ゲーム機やPCであるかもしれない。マルチプラットフォーム向けの開発ライブラリを整備しましたから、どの端末向けでも作品は作れます。携帯型家庭用ゲーム機やスマートフォンを含めて対応できる開発体制です。

 ■世代をこえたブランド育成を目指して(>>Page 3)

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