2012年12月29日(土)
──『コール オブ デューティ』から少し話を広げて、国内におけるFPSの現状についてどう思いますか?
BRZRK:コンソールに関して言えば、もう男性も女性も関係なくFPSをプレイしている状態。
uNleashed:コンソールで人が増えてきているっていうのは、非常にいい傾向ですね。
BRZRK:一昔前までは、FPSは洋ゲー好きしかやらないニッチなジャンルで、「洋ゲーってつまんないんでしょ」といった頭の古いレッテルを貼り付けられていたけれど、今となっては逆の立場になりつつある。「最近の日本のゲームってどうなの?」と。そんな日本のゲーム市場に違和感を覚え始めた人が『コール オブ デューティ』のようなゲームに触れて「これスゲェんだけど!」と言っているケースがカジュアル層に増えてきているというのは確実に感じる。
uNleashed:日本のゲームしかやってこなかった人が初めて洋ゲーに触ると、まったく世界が違うことに驚きますからね。
hanatyan:最近のFPSは、昔の洋ゲーに見られたような投げっぱなし感がなくなって、日本にはないものなんだけれど、プレイアビリティの部分で引っかかることはなくなりましたよね。
──最近だと、日本のゲームよりもチュートリアルが親切だったりしますからね。
BRZRK:ですね。『コール オブ デューティ』はさらに進んでいて、『ブラックオプスII』ではFPS部分のチュートリアルがないんですよ。もう、チュートリアルで確認させる必要がないところまで来ている。すでにFPSの基本的な操作は世界中のゲーマーに浸透していて、コンソールでのキーアサインも統一されはじめているんだよね。
uNleashed:PCのほうで言うと、僕らはコアなコミュニティに属する人間なんで近視眼的な見方になりますが、コアなFPSプレイヤーは減ってきていますよね。
hanatyan:PC勢は、極めすぎて普通に出てくるタイトルでは満足できなくなってきています。そういうコアな人たちは何をしているのかというと、『Natural Selection 2(ナチュラルセレクションツー)』のようなRTSとFPSが合体したものや、『Day Z(デイジー)』や『The War Z(ウォーゼット)』のようなリアルでシビアなものを求めていっているんですね。
uNleashed:大きな動きとしては、『League of Legends(リーグオブレジェンド)』といったFPS以外のジャンルにユーザーを取られています。ただ、これはコア層の話であって、全体として見ればPCのFPSプレイヤーも増えてきてはいます。フリー・トゥ・プレイというスタイルが入ってきて、そこがものすごい人数を抱えているんですよ。これまでのFPSのコミュニティは超コアで、そこに属しているお互いが認識できる規模でした。ところがフリー・トゥ・プレイで一気に大きな集団となってしまって、「FPSって今どうなっているんですか?」と聞かれた時に、以前であれば「『Counter-Strike』が盛り上がっていて、これぐらいの人がいます」とコミュニティに属していれば誰もが答えられたんですね。
ところが今は、全体を見ているという人がいなくて、正確な認識ができていないんですね。フリー・トゥ・プレイの人たちはフリー・トゥ・プレイのゲームしか見ていないし、コアな話はわからない。コアな人はどうかと言うと、それぞれの方向に離散した状態であると。全体として軸となるタイトルがないので、人は増えていても盛り上がりは感じにくいという状況になっていますね。
hanatyan:それぞれの嗜好に広がって村ができて、それがさらに離れていくものだから、どうしてもつながりが薄くなってしまう。
──ある意味、格ゲーのコミュニティと近い状況かもしれませんね。“格ゲー”とひとくくりにされていますが、2Dと3Dでは分かれていて、似ているようなゲームでも別物で。
uNleashed:大枠の部分では同じ状況だと思います。ただ格ゲーのコミュニティと違うのは、タイトル単位での囲い込みができているかというと、FPSはできていないんですよ。同じゲームをプレイしていても、同じコミュニティにはいなかったりと。
BRZRK:大枠のゲーム仲間のようなものがあって、その中で人が常時移動しているような感じで、けっこうバラバラなんですよ。
hanatyan:これはFPSというよりも、PCでゲームやっているコアな人たちは、大体そんな感じですね。
BRZRK:特にコア層の人たちは、濃ゆいゲームを求めて常時行ったり来たりしているんですよ。数カ月ずっと同じゲームをやっていたと思ったら、他の人に誘われてあっさり別のゲームにいってしまったりと。逆にフリー・トゥ・プレイの人たちは、ずっと同じゲームをやり続けていますね。
uNleashed:FPSに関しては、フリー・トゥ・プレイのカジュアルから、コアに流れるという図式がなくて、コア層は減っていくしかないという問題を抱えています。解決するには何らかの大会だとか、コア層が集まれる物理的な場所が必要なんですが、今はそれがない。一方、『サドンアタック』や『Alliance of Valiant Arms(アライアンス・オブ・ヴァリアント・アームズ)』といったフリー・トゥ・プレイのFPSで囲い込みできているのは、そういったコンペディションがあって、Web上のポータルもある。そもそもフリー・トゥ・プレイは、囲い込みを前提としたビジネスモデルなので、コミュニティができているから続けていられる。この状況下で、コア層はどうすればいいのかというのが現在の課題ですね。
hanatyan:大手パブリッシャーのFPSは、もうコンソールに行ってしまうと思うんですけど、ビジネスとはまた違った、インディーズの舞台から出てきたゲームがヒットすると、それがコア層の核となって盛り上がっていけますので、コアなFPSコミュニティ自体がなくなったりはしないと思います。ただ、不安定ではありますけれど。
──どういったFPSが出てくるとPCのコア層は盛り上がるんでしょうか?
hanatyan:基本的に、PCのFPSって『Counter-Strike』のようなもので成り立っているんですよね。要するに、自分らで好きなように作れるというのがPCのおもしろいところなわけで。今は、それにあたるものが特にないから盛り下がっているように見えるけれど、自分で作りたいという人はいなくなったりはしないので、盛り上がれるものが出てくるまで待っていてくださいという状態です。
BRZRK:今のFPSのマルチプレイに当たり前のようにある“キャプチャー・ザ・フラッグ”というルールも、MODから生まれたものだからね。ユーザーが作ったものが後に与える影響っていうのは、実はすごく大きい。
hanatyan:メーカーがMODをサポートしなくなってきたという現状があって、今、MOD文化はインディーズでイチから作ろうという流れに変わってきています。今なら、Source SDK(ValveSoftware提供の開発キット)やUDK(Epic Games提供の開発キット)を使うのか、それともUnity(Unity Technologies提供の開発キット)にするかといったように、ほぼゼロから作るのに近い状態で、開発期間は長くなってきていますね。
BRZRK:ただ、Mojang(モヤン)の『Minecraft(マインクラフト)』のように、インディーズは一発当たれば一生食っていけるだけの爆発力がある市場にはなっている。
hanatyan:そうやって成功した人たちが、その資金を使って好きなものを作っていけば、さらに盛り上がるかもしれない。結局のところ、PCのコミュニティはユーザーの発信から生まれてくるものなので、いつかは次の盛り上がりが来るんでしょうけど、それがいつになるのかというのはちょっと予想できないですね。
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